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NISAでも人気の『オルカン』を再点検!?

 一つの商品で、米国や日本、そして新興国を含めた、全世界の株式に投資ができると大人気の投資信託、オールカントリー。略して『オルカン』。
 そんなオールカントリー(全世界株)タイプの投資信託に投資する際の、メリットや注意点などを再確認してみました。

《オールカントリーの魅力》

全世界の株式に、まんべんなく投資ができる安心感。

 全世界株式(オールカントリー)型の投資信託の魅力といえば、先進国だけでなく新興国も含めた全世界に、まんべんなく投資ができるというところです。
 いくら米国経済が強く米国株式が一番魅力的な投資先だと頭では考えていても、「本当にアメリカだけでいいのだろうか?」と思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
 そんな時、アメリカだけに縛られることなく、今勢いのあるインドや、私たちが現に住んでいる日本など、他の国や地域にも、一緒に投資ができるとなれば、ちょっとした安心感につながります。

投資の基本は分散投資。

 投資先を分散する。これは投資の基本ともいえる原理原則です。「卵を一つの籠に盛るな」という有名な格言についても、多くの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。
 オールカントリーは、全世界の約3,000銘柄に分散して投資をするという、まさに最大限に分散をさせた投資信託と言えなくもありません。

 オールカントリーで採用されている銘柄は、時価総額にすると、全世界の85%をカバーしていると言われています。いってみれば、「地球を丸ごと買っている」と言えなくもない規模で分散をしています。

運用にかかるコストがとても安い。

 投資信託には、『購入時手数料』と『信託報酬手数料』、そして『信託財産留保額』という手数料がかかります。
 しかし、オールカントリータイプの投資信託を購入する場合、『購入時手数料』と『信託財産留保額』が、かからないようになっていることも多く、実質的に『信託報酬手数料』のみとなっています。
 さらに、この『信託報酬手数料』も、他の投資信託などと比較してみても、とても低く抑えられていて、中には0.06%以下で運用されているものもあり、数多ある投資信託の中で最低の部類に入っていると言えます。

 オールカントリータイプの投資信託のほとんどは、インデックスファンドという運用方式を利用していて、人の判断などをできるだけ減らし、機械的、自動的に運用ができるようにして、極力コストがかからないように設計されています。

 そのため、全世界というとても幅広い分野へ投資をしながら、このような超低コストな投資信託として運用することが出来るようになっています。

 オールカントリーの魅力は、全世界という幅広い世界に分散投資ができ、しかもそれを超低コストで実現しているというところにあるように思われます。

《オールカントリーの注意点》

米国株中心のポートフォリオ

 オールカントリータイプの投資信託のポートフォリオ(資産配分、組み合わせ、資産の中身といった意味)は、米国株式が中心になっています。その比率は、全世界と言いながら、約6割が米国の株式なっていて、かなり米国に偏った感じになっている印象です。
 さらに言うならば、オールカントリーを代表するMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(オールカントリータイプの投資信託が連動の目標としている株価指数)では、米国のトップ10の企業だけで、インデックス内の約15%を占めていて、日本の約5.5%や中国の約3.2%、インドの約1.7%をはるかに上回っています。また新興国全体を合計しても10%程度にしかならないので、オールカントリーというよりも、実態としては先進国株式や米国株式に近いことが想像できます。

 これらの情報から受け取った感想としては、オールカントリーは、その名前とは違ってかなり米国よりになっており、オールカントリーの投資信託を買うのも、S&P500の投資信託を買うのも、さほど変わらないのかもしれないという印象を持ちました。

時価総額加重平均という呪縛

 オールカントリーに限らず、S&P500、TOPIXといった多くのインデックスで、時価総額加重平均という方式でポートフォリオの中身を配分する方法をとっています。
 この時価総額加重平均という計算方式は、時価総額で配分比率を計算するために、株価が上がろうと下がろうと関係なく、バイ&ホールドで運用できるので、売買の頻度を減らすことにつながり、投資信託の運用コストを下げることが出来ます。

 しかし、一部の銘柄がバブルのように極端に上昇した時などは、市場の時価総額に偏りが生じる可能性も指摘されています。
 時価総額加重平均方式を利用しているインデックスでは、一部の銘柄の急上昇によって市場に偏りが生じることを一切考慮していないために、インデックスの投資ポートフォリオにも偏りが生じる可能性が考えられています。

 つまり、時価総額加重平均型の投資信託は、割高になった銘柄をその割高になった価格のまま、他の割安になっている銘柄よりも、たくさん買っている可能性が高いわけです。
 市場にバブルが発生していなければ、時価総額加重平均型のインデックスは上手に機能すると思われますが、たまに発生するバブル相場に対しては、脆弱なポートフォリオ構成になっている可能性も考えられます。

オールカントリーは株式資産にしか投資していない。

 当たり前のことですが、オールカントリーインデックスファンドは、株式資産に投資をする投資信託なので、株式資産にしか投資をしていません。そのため、多くの国に分散投資をしていたとしても、株式資産どうしでは価格変動の連動性が高いために、ポートフォリオ全体の下落リスクもほとんど軽減することができません。
 つまり、地球丸ごとのような幅広く分散投資をしても、分散投資の目的の一つである、資産全体の評価額の下落リスクを減らす効果は、あまり期待できないと考えられています。
 現に、リーマンショックのあった時のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは、52.8%下落しており、その後元の位置に戻るまでに、約5年かかりました。

オールカントリーとS&P500の両方に投資をしている人も?

 オールカントリーの他にも、もう一つ人気の投資信託があります。それは、S&P500に連動するインデックスファンドです。
 ご存じの通り、S&P500は、米国株式の株価指数です。つまり、オールカントリーという米国に偏りがある株価指数の投資信託に、S&P500という米国の株価指数に連動する投資信託を組み合わせてしまうと、ポートフォリオ全体がさらに米国株式に偏ることになり、分散投資の理屈から言えば、全くの無意味であるどころか、逆に分散投資の効果が薄れる悪影響さえ考えられます。

 分散投資の基本から考えれば、オールカントリーを1つ選択したら、他の米国株をポートフォリオに入れることは、あまり賢いやり方とは言えません。むしろそれならば、最初からオールカントリーではなく、S&P500に連動する投資信託を買うべきだと思います。

 初心者向けという言葉や、人気があるという言葉につられて、いろんな投資信託を買ったり、変額保険に加入したりしている人も、たまに見かけることがありますが、それだと『投資の目的』や『運用方針』がごちゃ混ぜになり、また曖昧になってしまい、かえって資産運用することで悪影響を及ぼしかねません。

 オールカントリーという選択は、これ一本ですべて完結させるという商品なのだと思います。他の商品と組み合わせるという前提で投資すべきものではないのかもしれません。
 ただ、これ一本で完結というのは、簡単でいいのですが、複数の商品に分散して投資をしてみたいというチャレンジ精神の高い人には、合わない商品なのかもしれません。

 まとめると、オールカントリータイプの投資信託の注意点は、米国中心であまり分散投資の意味をなしていないという問題がありそうです。オールカントリーには先進国だけでなく、新興国も含まれているという安心感で購入している人もいるのかもしれませんが、実際には新興国に投資をしている効果は、かなり薄いと思われます。
 また、時価総額加重平均型という運用方針から、適正な価格から外れた割高な銘柄が多くなりやすいバブルと呼ばれるような状態に市場が入ってしまうと、そのバブルに対して脆弱な資産構成になりやすい可能性も考えられます。(効率的市場仮説を信じている人にとっては、懸念するような話ではないかもしれませんが。)
 そして、オールカントリーはそれ一本ですべてが網羅されすぎているため、他の投資信託などとの組み合わせ方は、考えるのが結構難しそうだという問題もありそうです。正しく分散投資をするための商品が、かえって他の投資信託にも投資をすることで、正しくない分散投資になってしまう弊害もでてくる可能性がありそうです。

 とはいえ、かなりの低コストで、たった1本で世界中に分散投資できるというのは、大きな魅力であることは間違いありません。オールカントリーという商品が、良い投資信託の一つとして挙げられているのは本当だと思っています。
 あとは、投資する人自身の使い方次第ということなのでしょう。