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僕がある経営者に「差別化をもうやめよう」と伝えた理由

ある小さなお菓子メーカーの経営者から以前こんな相談を受けたことがあります。
「うちの会社は小売店に仕入れてもらうのにいつも苦戦するんです。大手菓子メーカーのスキマに入っていかないといけないので商品の差別化をいつも考えています。でも、なかなかうまくいかない。どうやって差別化をしていったらいいか教えてもらえないでしょうか」

「差別化」


いろいろな場面で聞く言葉です。
競合商品との違いを明確にする、競合商品と比べて「こっちのほうが優れてますよ~」と伝えていく。
差別化戦略は、いまや当たり前に使われているものなので、あまり疑問を持たずに「差別化が大切」と思われていることがあります。

僕に相談をもちかけてくれた人も、差別化するのは当たり前という感じでした。
そんな彼に僕はこう伝えました。

「差別化という考え方、やめましょう」


何で僕が彼にそう伝えたか、その理由は「差別化」という言葉が脳をある方向に誘導するからです。
差別化戦略を正しく理解していれば、確かに差別化は武器になると思います。一方で、そこまで理解をしないままに「差別化」という言葉を使ってしまうと起きるリスクがあります。

差別化が導く大きなリスクが「お客さん視点」が薄れてしまうことです。
「差別化すること」を考える時に意識するのは競合商品との差です。競合との差異ばかりに意識がいってしまうと、それがお客さんにとって魅力的なのかどうか、付加価値が高いかどうかがが二の次になることがあります。

たとえば、新しいラーメン店をオープンしようとするとき。
開店するお店の近くにどんなラーメン屋があるかリサーチし、周りのラーメン店とは違う特徴を出そうと工夫する。周りに家系ラーメン、醤油ラーメン、味噌ラーメンなどの店があるから、自分のお店は貝出汁ラーメンにしよう。これは話をわかりやすくするためにちょっと極端な例を出しましたが、差別化を意識するとこういう思考のプロセスが起きる可能性があります。

でも、お客さんのことを考えたら、ラーメン店主が作れる最高においしいラーメンとは何かを考えるほうがいいケースは多々あります。「魅力的なラーメンとは何か」という問いからラーメン店を考えると、差別化とはまったく違うラーメン店の姿が浮かび上がってきます。
それは差別化ではなく、魅力化です。
ラーメン店であれば、お客さんが食べたいのは最高においしいラーメンを考えることが魅力化になります。

差別化で意識するのは競合商品
魅力化で意識するのはお客さん

差別化と魅力化。
使う言葉ひとつで、導かれる結論が変わるかもしれません。

言葉は「問い」になります。
マーケティングもブランディングも、事業や商品の開発も
広報も宣伝も、どんな言葉を使って考えていくかから
スタートしています。

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