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ノンフィクション連続小説第10話 『妖怪の棲む家』

ゾンビ歩きの爺さんの晩年は強烈だった。

数百万円もする買い物を電話1本で繰り返す。高級布団、高級チェア、バーカウンター(誰も飲まないのに!)、グランドピアノ、それらを置くために家に部屋を増やす工事など…。

「また買ったのか!」「もう何やってるの本当に!」「いい加減にして!」

ヒステリックな祖母と父の悲鳴と怒鳴り声が常に響いていた。

ソンビ爺さんは、いつも変わらず黙って狸寝入りをしていた。この家のお金は使い果たしてしまえ、というようだった。ここにある家のお金を大事にしていないのがよくわかった。

爺さんは婿養子だ。意地悪なヒステリック婆さんの家系が土地持ちだ。爺さんは質素な家庭で育ったということなので、逆玉ということになる。

爺さんは社交的で明るくてとてもハンサムだったらしい。

選挙にも数回出馬している。すべて落選だ。選挙はお金がかかる。毎回1千万円以上の大金を使っていた。議員になれていたらまた違ったのだろうが出費ばかりで選挙に出るたびに土地を切り売りしていた。

爺さんはこの家で贅沢しすぎ、重度の糖尿病になった。私が幼少の頃、爺さんはまだ50歳半ばだったが、週に3回透析に行き、総入れ歯でオレンジジュースでうがいをし、ゾンビ歩きで手はいつも震えていた。

昔ハンサムだったとか、明るく社交的だったとか親族が褒めるが私にはさっぱりわからなかった。いつも尿臭くて、おむつの音をパサパサさせながら歩いて、コンロに置いてあるおでんの鍋に手を入れて直接食べている。爪の長い汚れた手だ。お風呂には祖母と父と母が3人がかりで入れるが、浴槽が体の垢で真っ白になる。そんな祖父が、私はかなり苦手だった。

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第10話はここまで。次回もご期待ください。


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