ノンフィクション連続小説第11話 『妖怪の棲む家』
ゾンビの爺さんは、週に3回以上も透析に行かなければ生きていられない。送り迎えは、父。父は車好きで当時まだ30歳過ぎだったが車を3台所有していた。高級国産車、高級外車2台。
車を傷つけないようにと神経質なので乗り心地が悪かった。ドアを開けるときぶつけないよう気をつけろ、靴が椅子にあたらないようにしろ、お菓子はぜったいに食べるな、という具合に常にうるさかった。
常用している国産車でゾンビ爺さんの送迎をする。私も時々助手席に乗せられて行った。
総合病院の前に停まって透析が終わるのを何時間も待っている。たまにガソリンを入れに行ったり銀行に行ったりしながら。クーラーのやたらと効いた車の助手席に座り、私は何もすることがなくとても退屈だった。
ゾンビの爺さんほどの重症ではないが、意地悪な婆さんも糖尿病だ。婆さんの送迎もあった。
私は感じていた。
『こんなことをしていたら父の人生は、親の送迎で終わってしまいそうだ。』と。
父は外に勤めたことはない。だから時間の融通が利くのをいいことにそんな雑用で時間を費やしていた。このことは、やはり将来的には大きな痛手となった。
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第11話はここまで。次回もご期待ください。
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