裁判所と裁判官に対する戦いの事例【政治と政府と日本の悪事 2月号】

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裁判所と裁判官に対する戦いの事例

今回は、裁判所と裁判官に対する戦いの事例をとりあげたいと思います。これだけでもかなりの基礎知識が要求されると思いました。筆者は専門家ではありませんのでざっくりと戦いの流れを見たいと思います。

さて、この事例から何を学べるのでしょうか。

  • 裁判所と裁判官に対して戦う必要が出てくることがある。裁判所と裁判官がこんなことまでしてくるのかという驚き。

  • 裁判官を刑事告訴できるのか。どのような告訴状で刑事告訴できるのか。

  • 裁判官を辞めさせることができるのか。仕組みとしてどのようなものがあるのか。

国と争う時に裁判になった時のために、我々は認識を現実に合わせる必要があります。どうやら、裁判官は、全員がまともとは限らないようです。同様に、裁判所もまともとは限らないようです。まともでは無いものとの戦い方とその限界を知っておく必要がありそうです。もちろん、「まとも」の定義によります。

事例

今回事例としたいのは、弁護士の木原さんによる以下のツイートです。

上記サイトからの引用です。

この書面は、木原弁護士を強制的に退廷させて廊下に投げ飛ばすという前代未聞の暴行に及んだ春名茂裁判長と2名の陪席裁判官に対し、①国会の裁判官訴追委員会に対して訴追請求し、②東京地検に刑事告訴するものです。

「退廷させて廊下に投げ飛ばす」という暴行を、裁判長の春名茂という人物が行ったという内容です。もう少し実際は「…被告訴人春名茂は、裁判官らと合議の上、突如として告訴人木原功仁哉に退廷命令を宣告し、警備職員4名に命じて同人の両手両足を抱へ込んで担ぎ上げ、強制的に身体を拘束し、法廷外へ連れ去つて投げ出され…」という内容です。

警備職員4名が木原氏を投げ飛ばした、ということです。

このことに対して、刑事告訴と訴追(そつい)請求が行われたという事例になります。

訴追請求は、裁判官を辞めさせたい(罷免)ときに、国民ができる方法のようです。

日本国民は、裁判官に弾劾による罷免の事由があると考えるときは、訴追委員会に、罷免の訴追をするように求めることができます。罷免の訴追の請求をするには、その事由を記載した書面を提出しなければなりません(弾劾法15条1項・4項)。なお、罷免の訴追を請求するための費用及び手数料は、不要です。

https://www.sotsui.go.jp/system/index4.html

刑事告訴上と訴追請求上は、上記サイトからダウンロードできますが、それぞれリンクを貼っておきます。
告訴状(PDF)
訴追請求状(PDF)

刑事告訴

まず、刑事告訴というものについて確認したいと思います。wikipediaによると次のように書かれています。

告訴・告発(こくそ・こくはつ)は、検察官や司法警察員に対して犯罪を申告し、国による処罰を求める刑事訴訟法上の訴訟行為である

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%8A%E8%A8%B4%E3%83%BB%E5%91%8A%E7%99%BA

同じくwikipediaによる解説です。告訴・告発をどのような手続きで行うかです。

告訴・告発は、書面で提出することも(電子メール不可)、口頭で申し立てることもできる(241条1項。口頭の場合は241条2項により捜査機関に調書作成義務が課せられる。)。書面によった場合、その書面のことを告訴状・告発状という。告訴状または告発状には特に決まった様式などはないが、後述する告訴・告発の要件を満たす記載がされている必要がある。

今回の告訴状の1ページ目は次のようになっていました。

告訴状の「告訴の趣旨」によると、次のように書かれています。

被告訴人らの後記所為は、公務員職権濫用罪(刑法第193条)、特別公務員職権濫用罪(刑法第194条)及び特別公務員暴行陵虐罪(刑法第195条)に該当すると思料されるので、被告訴人らを厳重に処罰されたく告訴する。

どうやら、以下の刑法に該当するとしているようです。
・公務員職権濫用罪(刑法第193条)
・特別公務員職権濫用罪(刑法第194条)
・特別公務員暴行陵虐罪(刑法第195条)

刑法によると次のように書かれています。

(公務員職権濫用)第百九十三条 公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。

(特別公務員職権濫用)第百九十四条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。

(特別公務員暴行陵虐)第百九十五条 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。
 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。

少し長いですが告訴状の「告訴の事実」も引用しておきます。

被告訴人春名茂、同横井靖世及び同下道良太(以下「裁判官ら」といふ。)は、東京地方裁判所民事第2部に配属された裁判官であり、同庁令和3年(行ウ)第301号武漢ウイルス感染症指定取消等請求事件(以下「本件事件」といふ。)を審理する合議体を構成するものであるが、同年10月12日午後1時30分に同庁第703号法廷で開廷された同事件の第1回口頭弁論期日において、告訴人が同事件の原告訴訟代理人として、予め同合議体に提出しその陳述する機会を与へられてゐた別紙意見陳述書に基づいて朗読しやうとした際、別紙意見陳述書のうち下線を施した部分(以下「検閲部分」といふ。)を陳述することを禁じたので、告訴人がその理由の説明を求めたが、裁判長である被告訴人春名茂は合理的な理由を述べなかつたことから検閲部分の陳述を始めたところ、被告訴人春名茂は、裁判官らと合議の上、突如として告訴人木原功仁哉に退廷命令を宣告し、警備職員4名に命じて同人の両手両足を抱へ込んで担ぎ上げ、強制的に身体を拘束し、法廷外へ連れ去つて投げ出され、よつて、裁判官らは、合議に基づく共謀の上、違憲の検閲行為を行ふために、その職権を濫用して告訴人に退廷命令を発出して警備職員に命じて逮捕し暴行させたものである。

告訴状の「事情」の箇所も興味深いので、見てみてください。裁判官だけでなく裁判所がどのように今回の事件に関わっているのかが分かります。一部引用します。

そして、この意見陳述書は、裁判所の要請によつて事前に文書を送付してゐるもので、その一部を削除せよといふのは、占領憲法第21 条第2 項前段が禁止する検閲に当たり、裁判所が憲法違反の検閲をすることは到底許されるものではない、と南出弁護士は強く抗議した。

裁判所が憲法違反の検閲を行っているのではないか、ということのようです。

訴追請求

この訴追請求は、裁判官弾劾法で定められた裁判官弾劾制度の話だと思われます。この制度に則って、弾劾裁判が開かれ、裁判官を罷免(やめさせる)ことができるようです。

訴追請求状の書き方と請求のやり方は、上記で書かれています。

今回の訴追請求状の1ページ目は次のようなものです。

罷免された裁判官が実際にいるのか

さて、気になるのは、罷免された裁判官が実際にいるのかどうかです。いることはいるようです。

Q これまで弾劾裁判を受けた裁判官は何人いるのですか。そのうち罷免された裁判官は何人いるのですか。
A 弾劾裁判を受けた裁判官は延べ9人で、そのうち罷免された裁判官は7人です。

https://www.dangai.go.jp/intro/intro6.html

過去の事例は、こちらのサイトに載っています。

古いもので昭和30年の罷免があり、最新のものは平成24年のもののようです。

統計はこちらに載っています。

https://www.sotsui.go.jp/data/index3.html

裁判官弾劾手続の流れは次のようになっているようです。

https://www.sotsui.go.jp/system/index9.html

この裁判官弾劾制度に関して、いくつか気になる点があるように思えました。この制度の評価に関わる部分です。
1.議事が非公開であること。

訴追委員会の議事は、公開しないことになっています(弾劾法10条3項)。したがって、訴追委員の出欠、発言や表決、審議資料、調査の経過や内容、決定の理由等は、一切明らかにすることができません。

https://www.sotsui.go.jp/system/index6.html

なぜ非公開なのかは分かりません。もっともな理由付けはあるのかもしれませんが、弾劾裁判は、訴追委員会から訴えをもってして始まるため、訴追委員会のステップで非合理的な行いがされていないかの評価と検証は重要に思えますが、これを行う仕組みがないということように思えます。

このことに関しての反論はたとえば以下のページにあるようなものです。

議事のすべてを公開する必要はないかもしれませんが、評価と検証のために、何を公開すべきかどうかの議論はあって良いように思えます。

なお、罷免の理由としては以下の分類がされています。

https://www.sotsui.go.jp/data/index3.html


2条1号と1号と書かれているのは、裁判官弾劾法のものに該当します。

第 2条(弾劾による罷免の事由) 弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
一 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
二 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。

https://www.sotsui.go.jp/data/index4-3.html#d_2

参考として、伊藤敏孝氏は「訴追請求事由からみた裁判官」(PDF)の中で、事由を類型化し、それぞれに関して見解を述べています。

2.過去にどのような訴追請求があったのか分からないこと。
こちらに関しては、国民側で抵抗できるかもしれません。今回公開されていた訴追請求状のように、訴追請求状を蓄積し、公開し、検索できるサイトを作れば一つの解決策になると思われます。

まとめ

今回はざっくりと裁判官がこんなこともしてくれるのかというのが分かりました。また、そのような裁判官に対して、我々としてどんな対抗ができるのかを見ました。

今後の雑誌で取り上げたい内容

・訴追請求という仕組みの基礎知識
・刑事告訴のやり方の基礎知識
・刑法第193条、194条、195条で勝てた裁判はあるのかどうか。つまり、勝算のある戦いをしているのかどうか。勝てないならどうしてなのか。勝てない場合、どうやって今後戦っていけばよいのか。

施策

・訴追請求状を蓄積し、公開し、検索できるサイトを作る

裁判所と裁判官に関してのその他の参考情報

裁判所と裁判官に対して、過度の期待をしないほうが良いということが分かる書籍です。裁判所に正義が存在するとの期待はやめたほうがよさそうです。

裁判官というと、少し冷たいけれども公正、中立、優秀といった印象があるかもしれない。しかし、残念ながら、そのような裁判官は、今日では絶滅危惧種。近年、最高裁幹部による、思想統制が徹底し、良識派まで排除されつつある。 三三年間裁判官を務めた著名が著者が、知られざる、裁判所腐敗の実態を告発する。情実人事に権力闘争、思想統制、セクハラ・・・、もはや裁判所に正義を求めても、得られるものは「絶望」だけだ。

その他の文献

きちんと読めていませんが、参考になりそうな文献です。
・土屋孝次,< 論説> 裁判官弾劾制度再考, PDF 
・伊藤敏孝, 訴追請求事由からみた裁判官, PDF

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