#12 鮮明な記憶、忘れた思い出
「今が一番楽しい時だよ!」「今を思いっきり楽しんで!」
そう言われるのが嫌い。
高校時代にもよく言われたし、就活が終わった現在も、主に年上の人に飽きるほど言われている。
分かってる。
今私に流れる時間がどれだけ貴重で、どれだけかけがえのないもので、多くの人に羨ましがられるものなのか。
だがその時間を有意義に使える自信は全くない。
でも人にそう言われると、なんだか今のままじゃいけない気がして、だからといってどうすればいいか分からなくて、自分が時間を無駄にしている愚か者のような感覚になる。
ていうかそもそもそういうこと言ってくる人って、本気でわたしのこと考えてくれてる?
本気で言ってるなら、具体的に、もっと何したらいいか教えてよ。
ただ暇潰しみたいに自分の人生の後悔を人に押し付けないで。
私はあなたの人生の2回目じゃないから。
って言えたらいいけど、年上の人にそんなこと言えないんだよな。
高校生の時もそうだった。
「青春だね」とか言われたけど、青い春どころか先が見えない真っ白な冬だった。
私は高校時代に戻ったってきっと同じことを繰り返すだろうし、あの時はあれが精一杯だった。
だから今高校生と話していても、「今を楽しんで!」なんて軽率に言えない。
この子は今必死。
私が介入して運命おかしくなったら責任取れないし。
だいたい、なんで後悔しちゃダメみたいな風潮になっているんだ?
後悔が少しでもある人間が負け組みたいな
若い頃の貴重な時間を楽しめた人の方が、楽しめなかった人よりも有意義な人生を送ったみたいな
決して戻れないと誰もが分かっていながら「戻りたいね」と話すことが尊いんじゃないのか?
後悔の詰まった若い頃の思い出こそが、年老いていく人生の中で光り輝く唯一の宝物になるんじゃないのか?
違う?
分からない。
答えなんてないだろうけど
私、誰かが自分の疑問に答えてくれるのをずっと待ってるな。