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水産スタートアップにおけるパブリックセクターのお仕事

本記事はUMITRON Advent Calendar2021の22日目の記事です。

はじめまして、ウミトロン株式会社でビジネスディベロップメントのマネージャー(パブリックセクター)として働いている浅野です。本日は自己紹介を兼ねてウミトロンでのパブリックセクターのお仕事を紹介させていただこうと思います。

ウミトロンの紹介

ウミトロンは、成長を続ける水産養殖にテクノロジーを用いることで、将来人類が直面する食料問題と環境問題の解決に取り組むスタートアップ企業です。シンガポールと日本に拠点を持ち、IoT、衛星リモートセンシング、機械学習をはじめとした技術を用い、より安全で、人と自然に優しい「持続可能な水産養殖を地球に実装する」ことを目指しています。

なぜ私がウミトロンにいるのか?

私は大手シンクタンクに新卒で就職し、そこで一次産業や食品産業における調査・研究やコンサルティングを経験した後、中央省庁への出向やコンサルティングファームでの勤務を経て、2020年からウミトロンで働いています。

水産学部出身なので、元々水産分野に関心はあったのですが、なぜウミトロンに転職をしたのかについて少しだけお話しさせてください。
今から遡ることウン10年(そこまではいかないけど笑)。17歳の自分は大学の願書にこう書きました

私は将来、世界の海へ赴き、水圏生物とそれを取り巻く環境、そして私たち人間との共存について、広い視野で保全ができる仕事に従事したい。(中略)漁業・海洋資源開発に力を注ぐ傾向にある我が国の研究では難しいとされる海洋保全を実現するための知識や技術を吸収したい。

高校生の頃の話なので、とても漠然とした思いであったことは言うまでもありませんが、コンサルタントをしながら、頭の片隅に、この思いがずっとどこかにありました。自分がやっていることと、やりたいことのギャップをどのように埋めるのかというジレンマを感じていた頃、ウミトロンに出会いました

スタートアップでなぜパブリックセクター?

パブリックセクター、というのは官庁、地方自治体、独立行政法人、そして学校法人などの公的機関のことを指します。ん?スタートアップでパブリックセクター?と思ったそこのあなた。実はとても大切なんです。

そもそも、公的な研究機関ではない、中小の民間企業に潤沢な研究開発資金はありません。これは日本だけではなく世界でも同様であり、各国のパブリックセクターはイノベーション創出のため様々な取組を実施しています。

例えば、多くのユニコーン企業を輩出しているアメリカ合衆国では米国SBIR制度が1982年に設立され、それ以来、R&D型のスタートアップ支援の省庁横断的な枠組として機能してきました。
実は日本にも日本版SBIR制度はあって、1999年から取組が始まり、のべ94,000社、1.4兆円の規模で中小企業が支援を受けてきました。ただ、まだまだイノベーション創出のためのスタートアップ・中小企業支援となっていないこともあり、ユニコーン企業の創出や支援先企業の成果等、まだまだ課題があると言われています。
このような課題解決のため各省庁は創意工夫をして改善がなされていますが、私はスタートアップ側の変革や効果的な動きも必要であると考えています。

水産分野とパブリックセクターの両方に土地勘がある自分が、スタートアップであるウミトロンが持続可能な養殖の実現のため、パブリックセクターの切り口から何かできることがあるのではないかと思い、今、ここにいます

ウミトロンにおけるパブリックセクターの仕事

では、実際私を含め、ウミトロンのパブリックセクターのメンバーが何をしているのかを紹介させていただきます。

1. 補助事業や委託事業の提案
中央省庁や自治体等は、企業がやりたい事業を支援するための補助事業や、彼らが企業にやってほしいことを民間企業等に委託する委託事業を、民間企業にその予算を獲得してもらうために公示し、民間企業はそれに応募・入札します。
ウミトロンでも、経済産業省、農林水産省、内閣官房、復興庁、JETRO、地方自治体等様々な組織から補助金等をもらい、R&Dの実施や新規ビジネスの展開等を実現させています。
パブリックセクターでは、どのような予算があるかを事前に調査しておき、その事業が公示されたら提案・獲得を目指します。いかに事業の目的に則し、実現可能かつ波及効果を期待できる提案をかけるかが腕の見せ所です。

2. 日本の水産養殖分野の方向性を踏まえた事業計画
上で説明をしたような当年の事業獲得以外に、先を見据えた計画も重要です。省庁や自治体は夏から秋にかけて翌年度の予算の計画を立てます。その際、どのような事業に予算を要求しているのか、その結果どうなったのか等がオープンになります。それを確認しながら、更なる情報収集をし、ウミトロンとしての予算獲得計画を立て、提案する内容を確実に実現できるように準備をします。
それ以外に、国が主導する協議会への参加やシンポジウムでの講演等情報収集・発信の場を確保し、持続可能な養殖に賛同してもらえる仲間を増やしたり、共に目指せるパートナーを探したりすることもあります。

3. パブリックセクター事業のオペレーション
実は意外と大切なのがここ。パブリックセクターの事業の契約は、1年間いくらで仕事をしてください、というものではありません。提案内容を実現するために、どの費目にいくら使う予定でそれに対していくら使ったのかや、誰が、何月何日に、どのプロジェクトで何時間仕事をしたのかといった記録が詳細に確認されます。このような監査(確定検査等)に耐えうる社内のオペレーションの構築・運営もウミトロンではパブリックセクターの仕事です。

4.時にはなんでも屋
ここまでの内容だと基本はデスクワーク・オフィスワークなんだ、と思ったそこのあなた。そんなことはないです。シンクタンクやコンサルティングファームでも上で記載した仕事はしますが、スタートアップに来て何が一番変わったか、と聞かれたら現場での仕事もやること、と答えると思います。
補助金関係でお世話になっている生産者の現場に行って、機械が壊れていたら技術者のアシスタントになりますし、魚の販売イベントで人が足りなければ物販のお手伝いをすることもあります。同じミッションのもと集まったメンバーと共に助け合いながら仕事をするのはとても楽しく、刺激に溢れています。

生簀のUMITRON CELL(AIを搭載した自動給餌機)
メンテナンス作業の様子

プロフィール_つよつよウーマン

今後ウミトロンでやりたいこと

最後に、私が今後ウミトロンでやりたいな、と思っていることを少しだけ話します。(ここからは私個人の思いも含まれておりますので、その点ご留意ください)

ウミトロンはこれまで現場の課題解決を起点にアプローチしてきました。例えば、生産現場であれば養殖魚の生産効率を上げたい、無駄餌をなくしてコストカットを図りたい、そういったご要望に応えるための製品開発です。フードバリューチェーン全体の課題解決をするためのリテール事業も実施しています。

でも、今後はより一層「持続可能な養殖を地球に実装」を実現していくにあたって、広い視野で、長期的に考えていく必要があると考えています。地球規模の課題解決、という観点で考えるとまだまだ養殖に関する課題は存在します。
養殖が排出するCO2の削減を含め、養殖による環境負荷の低減や海面養殖においては生物多様性の理解・保全の検討が必要です。こういった状況も踏まえ、無魚粉・低魚粉飼料の推進や、ブルーカーボン洋上風力✖️沖合養殖といった養殖の在り方の検討にも挑んで行きたいと考えています。

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最後に、ここまで読んで下さったみなさまにちょっとしたお声がけです。
ウミトロンでは一緒に働く仲間を募集しています!水産養殖、そして海の未来に貢献したい、という方がいらしたら、是非ご検討くださいませ。



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