『ルポ路上生活』 作者:國友 公司
「言葉が悪いけど昔のホームレスというのは乞食でしょう。今のホームレスはただ家がないというだけなんだけど、昔の考え方で止まっている人が多いんだよね。このおじさんなんて成城石井で買い物してるんだから」
衝撃。
だが、この記述にしたって、その衝撃のほんの一部だ。
昨今のホームレスたちはどんな生活を送っているのか。それを知りたくて、当時二十九歳の著者が、彼らホームレスの現場に潜入して書いたルポが本書である。
或る作家さんから、この本オススメと言われて本書を手にした。
私のガキの頃の夢は、漫画家かアウトローだった。だから、乞食、ルンペン、ホームレスなどに対して、流石に憧れとまでは言わないが、関心はあった。
なーんとなく空想は出来るものの、実際には全く知らない世界。それを知ることが出来るということで、興味津々でページを繰ると、そこに描かれていた実情は想像とかけ離れていた。
次から次へと、「そうなの?!」が飛び出す、ホームレス生活初心者による日々の記録。面白くない訳がない。
彼らに対する昔っからのイメージの代表格といえば、食事情ではないだろうか?
レストランのゴミ箱漁って残飯集めしてんでしょ? 的なイメージ。
しかし、そんなことをしているのは、少なくとも本書中には一人もいない。
今や、彼らの食は相当に保証されているのだ。
食だけではない。衣類も、毛布や寝袋などまでもが勝手に手に入る様になっているのだ。
これらの事実を本書で知って、私はこう思った。
「ホームレスになるまでもなく、時間さえ惜しまなければ、オレも下手すりゃ食費をゼロに出来んじゃん?」
そういう時代なのだ。
下手に底辺で喘ぎ苦しむよりも、バンザイすれば却って楽になれる。
やはり日本は、優れた優しい社会主義国家だよなぁ。
因みに、冒頭の科白は、年金受給者だが家を持たないパターンのホームレスの弁。
何故、部屋を借りないのか、何故、生活保護を受けないのか、彼らには彼らの立場に於ける、合点がいく理由があるのだ。
勿論(?)、基本的に収入が無いとか、空き缶集めて稼いでいる様な、至極真っ当な(?)パターンの人々もいる訳で、ホームレスと言っても多様化しているのだ。
「坊主と乞食は三日やったらやめられない」
貴方ならどうする?