『リバースエッジ 大川端探偵社』 作者: 作・ひじかた憂峰、画・たなか亜希夫
原作者のひじかた憂峰は、狩撫麻礼の別ペンネームである。画はたなか亜希夫が担当し、週刊漫画ゴラクで2007年12月から2022年7月まで、各話読み切りのスタイルで不定期連載された。
ひじかた憂峰、つまり狩撫麻礼は2018年1月に死去したが、生前に残した原作のストックが有った為、そのストック分の作画を完了した2022年7月まで連載は続いた。
尚、2014年4月から7月まで、全12話がオダギリジョー主演にてドラマ化もされている。
浅草の隅田川沿いに建つ雑居ビルに位置する大川端探偵社に毎回持ち込まれる依頼事に対して、寡黙で淡白な調査担当の村木、幅広い情報網を持つも経歴一切不明の所長と、サバサバしたバイト受付嬢メグミの三人が対処していく。
探偵社で読み切りというと、懐かしの『ハード&ルーズ』が思い起こされる。
一風変わった不思議な案件たち。様々なモチーフとそれぞれの拘りを抱えた依頼者たち。狩撫麻礼らしいこれらの持ち味は、やはり二作間での共通項だ。
しかし、焼き直しではない。たまにハートフルな回もあったりもするものの、人間の業や醜く病んだ闇の姿が、本作ではエグい感じでより一層に浮かび上がってくる。
また、『ハード&ルーズ』では、主人公のパーソナリティが見どころの多くを占めていたが、本作の探偵たちは傍観者、若しくは観察者といったところで、それほど主観的ではない。
その為、淡々と綴られる大人の寓話の数々は、決して派手ではないながらも後を引く。
それでも、第五巻目辺りからだろうか。段々と主要人物たちのキャラが立ってきた。とりわけ所長が。
総じて言える雰囲気としては、「起承転結」の「転」を飛ばして「結」にいっちゃう様な感じとでもいうのか、毎度毎度割とあっさり結末を迎える。そして、それが必ず意外な展開を迎えるのだから感心しきりにさせられるのだ。
ただ、ちょっと老けキャラ登場が目立ち、若さや活力は無いかな〜。果たしてそれは作者の年齢の所為なのか、それとも作為的なものなのか。
しかし、それでもよくもまぁこれだけの話数の読み切りの物語を考えつくものだ。
とかなんとか思いながら、最近になって本作の単行本を第一巻から十巻まで購入して読み耽っていた私だったのだが、その最中驚くべき出来事が起こった。
なんと最終巻として第十一巻が2022年10月28日に発刊されたのだ。
2018年1月7日に七十歳で没した狩撫麻礼。三年余りを過ぎて、正真正銘、最後の新作が手元に届くとは、なんとも奇妙、とてつもなく奇跡的ではないか。
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