『作画汗まみれ 改訂最新版』 作者:大塚康生
2021年3月15日。
昭和生まれの人物の訃報は数あれど、私にとっては、その中で最もショックであり、嗚呼、とうとうおっ死んじまったか、というのが正直な想いだった。
しかし、89歳没だ。うんうん、頑張っていただけた。大塚康生さん。
『ムーミン』、『ルパン三世(第1シリーズ)』、『侍ジャイアンツ』など、私の子供の頃に幾度も幾度も再放送されていたので、その画風、動きっぷりはしっかり刷り込まされていた。
私としては、これほど「動く絵を描くのが好きなんだろうな」という人物を他に知らない。あと、車とか銃器とかもね。
初めて作画監督を務めた、日本の長編漫画映画史上に燦然と輝く、『太陽の王子 ホルスの大冒険』などは、まだ当時はフルアニメーション志向であった東映動画作品であった為に、惚れ惚れする様な動きだ。
NHK初の連続テレビアニメであり、個人的には宮崎駿の最高傑作だと思っている『未来少年コナン』だって、個人的にはルパン三世を悪党からつまらん善人に落とし込めたことと、前作映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』での、あの屈指の名シーンであった「また、つまらぬものを斬ったか」を台無しにしてくれたことで、どうにも好きになれないものの、出来自体は最高な映画『ルパン三世 カリオストロの城』にしても、この人が参加していなかったら? なんて想像も出来ない。
という訳で、急に思い立ち、Amazonでポチったこの本。
その名の通りで改訂最新版だ。「最新」とあるのは、二度目の改訂版だからである。
結構長いが面白い。
日本の長編漫画映画の黎明期からの、自身や周囲の人々、関わった作品たちについての振り返りをしているのだから、そりゃ長くなって当然だ。
それだけに読み応えがある。
フルアニメーションから始まった作画人生。だが、手塚治虫によって連続テレビ漫画『鉄腕アトム』が放送開始されたことから台頭した、リミテッドアニメーション。
それを否定はせず、受け入れつつも、やはり、
「キャラクターを動かすことによって、キメの細かい演技をさせるのがアニメーション」
という考えにこだわった職人肌、そしていつも紙の上で遊んでいたという、そのお仕事の様を是非知ってみてほしい。
ところで、ルパン三世は何故フィアット500なんてイタリアの大衆車に乗っているのか。
それは、宮崎駿が窓の外に停まっていたこの車を指し、こう言ったことによる。
「ルパンの車はこんなポンコツでいいんだ」
そのとき、大塚康夫はこう応えたと言う。
「あれ、おれの車だよ」
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?