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『火の鳥 ヤマト・異形編』 作者:手塚治虫

ヤマト編が第3部、異形編は第11部となる。ページ数の組み合わせやら何やら編集上の事情もあるのだろう。発表順にして欲しいところだが、読んでしまったものは仕方がない。後で作品の順番を脳内補正しよう。
ヤマト編で描かれるのは4世紀頃、古墳時代の日本。
奈良県明日香村にある石舞台古墳という、手塚治虫の言うところでは「剥き出しで出来損ない」の墓があり、何故この様な古墳を作ったのかということから着想した古代ロマン作だ。
と言いつつ、シリアスな未来編とは大分異なり、本作はナンセンスギャグもふんだんな、コミカルな描写が目立つ一作だ。

ヤマト王朝のヤマト王は、自らの権勢を世に残し示そうと、デタラメな歴史を書き表した「古事記」「日本書紀」を執筆させ、また、巨大な墓の建築を急がせていた。
しかし、九州は火の国の部族クマソのボス、川上タケルが正しい日本史を書いているという噂を聞きつけ、クマソ討伐を目論む。
父の命令により王子ヤマト・オグナは、クマソ征伐に出発する。クマソの国に入ったオグナは火の鳥を見た。オグナは、父の墓で殉死のいけにえにされる人々を救う為に、火の鳥の生き血を手に入れることを考えるのであった。
クマソの国で暮らすオグナは、元々父に反発していたこともあり、敵の王タケルの人格に惹かれ、更にタケルの妹カジカと恋に落ちる。
クマソの地で生きるか、ヤマトの国に戻るのか。
「だれかぼくの道を教えてくれ。このままだとぼくはどうしていいのかわからない」
そんな悩むオグナに対し、黎明編から続いて登場する或る人物が諭す様に語る。
「人間は死なないことが幸せではない。生きている間に自分の生きがいを見つけることが大事なんじゃ」
本作のテーマはここにある様だ。
自分のすべきこととは? 行動を起こしたオグナ。火の鳥はそんな彼を手助けするのであった。
オグナは生きがいを全うできるのか。

異形編では、7世紀末の乱世時代に日本の山寺で起きた出来事を描く。
八百年生きているという噂が立っている八百比丘尼。左近介は従者の可平との二人連れで寺に訪れ、八百比丘尼を斬った。
それは、残忍な領主であるが重い病にかかっている父が、どんな病でも癒すと評判の八百比丘尼に治療を頼んだことに起因する。姫でありながら男として生きることを押し付けられていた左近介は、父を憎んでたのだ。父が死ねば女に戻ることができる、そう考えたのだ。
翌朝、城に戻ろうとする二人であったが、琵琶湖を渡ろうと船に乗っても、波も無いのに押し戻される。山を降りようとしても元の位置に帰ってきてしまい、堂々巡りで寺に戻されてしまう。
不思議な力に戸惑っている内に村人が大勢でやってきた。病人たちが八百比丘尼に癒してもらおうというのであった。
その場を取り繕う為に八百比丘尼に変装した左近介は、村人たちの言う様に、本尊の中にあった光る羽根で病人たちを撫でた。すると病人たちは本当にたちどころに癒ってしまったのだった。
或る日、琵琶湖対岸で大きな火の手が上がった。戦だ。
この地に閉じ込められてしまった左近介は、次々と訪れて来る病人、怪我人の治療に明け暮れる。やがて寺には、傷ついた妖怪や魔物たちまでが訪れる様になっていた。
そんな日々を過ごす左近介は、夢の中で火の鳥に出会う。そして怖ろしい因果応報を聴かされるのであった。
本作のテーマはなんだろう? これも一つの命のあり方。そういうことだろうか。なんにしろ驚くのは二作間に於けるレイアウトやベンタッチといった画風の違い。時代に合わせて変化し続けた手塚治虫を良く表している組み合わせだ。

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