『ライブマシーン』 作者: 狩撫麻礼、松森正
「至高の”時の時” LIVE!」
六本木のジャズクラブで夜毎ソロの生演奏を務めるピアニスト、有山礼二。
或る夜、礼二の元に訪れた男がいた。それはかつての戦友だった。ゲリラの総統が命乞いの果てに差し出したダイヤモンドの山は仲間四人で分けた筈だったが、男の来訪の目的は全てを自らの物にすること。既に他の二人はこの世の者ではなかった。
残るは礼二のみ。
ナイフを翻した男は、一瞬後コンクリートに頭から叩きつけられ命を失った。
その夜の礼二のピアノは別人の様にスウィングした。礼二は、殺意という名のモチーフに興奮した。
灼熱のアフリカの戦場で鍛えぬいた傭兵生活で、偶発的に得たダイヤモンドのきらめきで、帰国後、都心部に’若過ぎる世捨て人”の隠れ家を手に入れた礼二。ただひそやかに余生をやり過ごすつもりだったが、8年のブランクの後、彼の指は再び鍵盤に魅せられていた。
不意に街中で声を掛けてきた小太りな中国人の靴磨き。
「ヒ・ト・ゴ・ロ・シ!」
礼二の靴を磨きながら、おもむろに靴磨きは言った。
「ワタシ世話してあげるよ、殺す相手。世の中にいらないクズのヒト紹介してあげる」
男は自らを”Q”と呼べと言い、礼二にもコードネームを求めた。
「ライブ・・・ライブマシーン」
礼二は応えた。
キレッキレ過ぎて痛いくらいである。
狩撫麻礼原作で、ここまでクールでキザなキメキメな主人公も珍しい。その雰囲気を醸し出しているのは、静寂をも感じさせる、静止画の様に美しい緻密な絵柄の松森正の筆力が成さしめているのかもしれない。
殺し屋、復讐、権力者、対する元テロリスト集団、共闘、別離。
それらにジャズピアニストとしての礼二の姿が絡み合うところが、狩撫麻礼らしく普通ではないところだ。
ハイテンポで流れる旋律は隙が無い。
緊迫感の持続。
息を詰まらせながらも読者を魅了させずにはいられない。そんな漫画作品だ。
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