『魔神ガロン』 作者: 手塚治虫
手塚治虫の漫画作品で、『冒険王』に1959年7月号から1962年7月号まで連載されていたものである。
テレビアニメの『鉄腕アトム』にゲスト出演したガロンを観たことはあったが、本作を読むのは初めてだ。
中古本屋さんで買ってきた単行本には、冒頭に作者自身の言葉がある。
「ぼくの初めての悪魔的なスターです。侵略ものというかたちのSF物語は、今ではずいぶんありますが、このガロンは、そのはしりの一つではないかと思っています」
手塚治虫はシチュエーションとしてのガロンの存在を、結構気に入っていたのかもしれない。
手塚漫画にはスターシステムと言って、同じキャラクターが色々な作品を跨いで登場することが常で、ガロンも『鉄腕アトム』だけではなく、『マグマ大使』や『三つ目がとおる』などにも出演する。いずれも主人公たちと対戦して強大な力で以て窮地に追い込むのがその役割だ。
そして、なんとびっくり、2004年には、永井豪による続編『魔神王ガロン』が連載されたが、掲載誌の『手塚治虫マガジン』が休刊したことにより、連載は中断されたと言う。
さて、そんな意外と人気者のガロンとはどの様な作品であろうか。
突然日本に落ちてきた謎の隕石。
調査に赴いた俵博士と助手の敷島は、東大の研究室へ隕石を持ち込むが、当初隕石と思われたその物体は、バラバラに分かれたパーツ群の集合体、塊だった。
二人掛かりで組み立ててみると、巨大なロボットが出来上がった。
しかし、様々なエネルギーやショックらの何も以てしても起動はしない。
俵博士は研究に没頭し続けていたが、十年後にとうとう起動に成功した。
だが、ロボットは無秩序に暴れ出す。
「ガローン」と叫びながら。
その姿からは理性というものが感じられなかった。
ガロンは、異星人が地球に送り込んだものだった。
その目的はテスト。地球人がガロンを正しく使用すれば善し。だが、もし悪用すれば地球を滅ぼすという。
暴れるガロンを正しく動かす鍵となるのは、ガロンと同時に送り込まれたピックという少年だった。
ということで、ガロン、敷島、ピックとその育ての家族、ガロンを狙う悪党達、それからガロンに翻弄される東京とその市民達の姿が描かれる。
しかし、相変わらずコマとコマとの間、それからストーリーの進みが早い。数ページもすると、もう次の展開が待っている。現代の漫画だったら、恐らく三倍程のボリュームになるだろうな。
そんな本作は、地球外生命体が送り込んできた物体が地球の安全を脅かすといった、モンスターアタックものの古典的な作品と言えるのではないだろうか。