野鳥観察|アカガシラカラスバト|葡萄色の瞳のとりこ
小笠原諸島に住むアカガシラカラスバトという鳥。
人(が持ち込んだネコ)によって一度は絶滅間際まで追い込まれ、人(と捕らえられ再び飼われる身となったネコ)の甚大な努力によって数を取り戻した貴重なハトである。
そんな貴重なお姿、お目にかかれたらそれはそれは幸運だなあとあんまり期待していなかったけど、入島初日に散策した遊歩道でいきなり出会った。
というか、運が良かったのか滞在中何回か出会った。
濃紺なのか緑なのか、暗い色の体とワイン色の頭部。
長めの尾羽と豊かな翼に対して、小さな顔。
葡萄色のかわいい瞳。
うわあ、これは綺麗な鳥だ。ファンが多いのもわかる。
ところで気になったのはその雰囲気だった。
ハトはハトだけど都会にいる態度の大きいカワラバトとは違う、マイペースに地面をついばむキジバトとも違う。
非常におっとりした無垢な空気を纏っている。
どのくらいおっとりかというと、
10数メートル離れたところにいる私たちに気づきながらも目立つ場所でじっと休んでいるところである。時間をかけて反対側から回ってみたけど、まだ同じところで静かに座っている。
天敵の少ない島ならではのこの性格だろうか、ネコに不意打ちを食らう姿が容易に想像できる。
実際、本来の天敵といえばオガサワラノスリという島唯一の猛禽しかいなかったわけだから、地面からの攻撃には慣れておらず上手く逃げられないらしい(ガイドさん談)。
なるほど、処世術に長けていないがゆえの、無垢な空気感だったか。
この鳥が処世術を獲得したら、都会のカワラバトのようにふてぶてしくその辺を闊歩するのだろうか。そしていつかベランダに巣材を持ってきたりとか…?
いやいや、豊かな森でこのまま安心して生きてくれと願うばかり。