沖縄県（国頭通学圏・中頭通学圏）ホンネの高校選び【無料記事＆有料相談】

沖縄県（国頭くにがみ通学圏・中頭なかがみ通学圏）にあるすべての高校の特徴と選び方を、朝森久弥が解説します。偏差値という指標をあえて使わず、進路希望や学習内容に本音で向き合い、「入って楽しめる高校」を高校受験生とその保護者の方が主体的に選べる情報を提供します。

この記事では、以下の通学圏に含まれる高校について解説します。

国頭通学圏：名護市なごし・本部町もとぶちょう・今帰仁村なきじんそん・国頭村くにがみそん・大宜味村おおぎみそん・東村ひがしそん・宜野座村ぎのざそん・金武町きんちょう

中頭通学圏：沖縄市おきなわし・うるま市・宜野湾市ぎのわんし・恩納村おんなそん・読谷村よみたんそん・嘉手納町かでなちょう・北谷町ちゃたんちょう・北中城村きたなかぐすくそん・中城村なかぐすくそん

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• この記事はとくに断りがない限り、2024年10月時点の情勢に基づいて執筆しています。将来的に、高校の統廃合やコース名変更などが起こる可能性があります。

• さまざまな高校受験生のニーズに合わせてオススメの高校を紹介しますが、この記事を書いた朝森久弥に個別に相談したい人は、記事の最後にある「購入手続きへ」のリンクからこの記事をご購入ください。

国頭通学圏

国頭通学圏の全高校Map

中学校卒業者数：1202人（2023年3月）
高校数：10校（公立8校＋国立0校＋私立2校）＋高専1校

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【　】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科（理数科など特進系専門学科を含む）は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた（　）内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

名護市の市街地に3校集中しているほか、通学圏内各地に点在している。通学圏内に鉄道はなく、通学に使われる主な公共交通機関は路線バスだが、名護市の市街地から遠ざかるほど不便になる。家族の車に乗せてもらって通学する人が珍しくないし、同じ国頭通学圏の高校に通う場合でも寮生活をしている人がちらほらいる。

大学進学を目指すなら

いわゆる難関大学進学を目指す場合、通学圏外の高校に進学する人もいるが、通学圏内で選ぶなら公立の名護高校（名護市）のフロンティア科がリーズナブルだろう。名護高校のフロンティア科（1学年定員80人）は事実上の普通科特進クラスで、通学圏内の生徒が学力上位から順に志望すると仮定すると、合格ラインは学力上位7%以内（中学校35人クラスで2位以内）となる。

名護高校は2023年に附属桜中学校（1学年定員40人）を開校し、中高一貫教育を始めた。附属桜中学校の卒業生は原則として名護高校のフロンティア科に進学するので、2026年以降、名護高校のフロンティア科にそれ以外の中学校から入学できるのは1学年約40人になると見込まれる。

名護高校（名護市）の普通科も大学進学に対応したカリキュラムを敷いていて、卒業生の過半数が大学に進学している。大学進学を目指しているが名護高校まで通うのは難しい場合、今帰仁村や本部町在住であれば北山（ほくざん）高校（今帰仁村）の理数科、宜野座村在住であれば宜野座高校（宜野座村）の普通科特進クラスが近場で通いやすい。なお、北山高校の理数科から文系の大学受験も可能（数学は3年生まで履修する必要あり）。金武町在住者は宜野座高校に加えて石川高校（うるま市）の普通科特別進学クラスが比較的通いやすい。

金武町の嘉芸（かげい）小学校区在住者は、隣接地域の特例で石川高校（うるま市）が学区制限なしで受検できる。もっとも、石川高校は定員割れが続いているので、学区外からの受検であっても合格ラインは変わらないと考えてよい。

大学以外の進路も考えるなら

商業科志望なら、名護商工高校（名護市）の商業科か地域産業科を考える。地域産業科も簿記を学ぶという点で商業科の仲間だが、観光ビジネスの授業があったり、中国語か韓国語を学べたりする。

工業科志望なら、名護商工高校（名護市）の工業技術科機械コース・工業技術科電気コース・建築科の3つから選べる。あるいは、沖縄工業高専（名護市）に進学する手もある。

農業科志望者に対しては、北部農林高校（名護市）が熱帯農業科・園芸工学科・食品科学科・林業緑地科・生活科学科の5学科を用意している。なお、畜産を学びたい人は熱帯農業科を選び、さらに2年生で畜産コースを選ぼう。また、生活科学科は農業の専門科目と同じくらい家庭の専門科目の授業があり、保育や福祉・調理が学べる。

情報の専門科目の授業に興味があるなら、名護商工高校（名護市）の総合情報科が向いている。

専門に特化したくないのであれば、北山（ほくざん）高校（今帰仁村）の普通科、本部高校（本部町）、辺土名（へんとな）高校（大宜見村）、宜野座高校の普通科普通クラス、石川高校（うるま市）の普通科普通クラスのいずれかを、通学のしやすさなどを考慮して選ぶことになるだろう。
本部高校は普通科だが、情報やスポーツ、福祉の専門科目の授業を選択して学ぶことができる（それぞれの専門学科に比べると、専門科目の授業は少ない）。
辺土名高校は普通科と自然環境科があり、どちらでもやんばる（沖縄本島北部の森林地帯）の自然調査をする授業があるのが特徴的だ。自然環境科は自然調査の授業が普通科より多くなる。

全日制以外の高校は

公立では、北部農林高校（名護市）が定時制課程の農業科をもつ。授業は夕方から始まる。
私立では、通信制課程をもつ八洲（やしま）学園大学国際高校（本部町）とヒューマンキャンパス高校（名護市）の本校が、国頭通学圏内にそれぞれある。

中頭通学圏

中頭通学圏の全高校Map

中学校卒業者数：5615人（2023年3月）
高校数：24校（公立20校＋国立0校＋私立4校）

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【　】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科（理数科など特進系専門学科を含む）は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた（　）内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

通学圏内にある市町村のうち、中城村以外のすべての市町村に公立高校が置かれている。通学に利用できる公共交通機関は路線バスのみ。家族の車に乗せてもらって通学する人が珍しくない。

いわゆる難関大学進学を目指すなら

中頭学区から通学可能な高校の中で最も大学合格実績の見栄えが良いのは、私立の昭和薬科大学附属高校（浦添市）だ。宜野湾市や沖縄市、嘉手納町から通学できるスクールバスがある。なお、昭和薬科大学附属高校は完全中高一貫校なので、高校からの入学は原則できない。

また、同じく私立の沖縄カトリック高校（宜野湾市）は、附属中学校からの内部進学者と高校からの入学者が混在する中高一貫校で、このうち普通科アドバンスコースではいわゆる難関大学を目指す生徒を対象にしたカリキュラムを採用している。

公立なら、球陽高校（沖縄市）か普天間高校（宜野湾市）を選ぶ人が多い。
球陽高校は2024年まで理数科と国際英語科に分けて募集していたが、2025年から文理探究科にまとまったので、入学時点で文系・理系を決めなくてよくなった。なお、球陽高校1学年7クラスのうち2クラスは附属中学校からの内部進学者である。普天間高校は、1学年9クラス全員が高校からの入学者だ。
高校入試で球陽高校または普天間高校に合格するには、学力上位12%以内（中学校35人クラスで4位以内）が目安となる。

さらに、公立である与勝高校（うるま市）の普通科特進クラスからも、コンスタントにいわゆる難関大学に進学する人が現れている。与勝高校の生徒の約半数は附属中学校である与勝緑が丘中学校からの内部進学者であり、彼らの多くが与勝高校の普通科特進クラスに進学しているようだ。

大学には行きたいと思っているなら

中頭通学圏には満遍なく公立高校の普通科が分布していて、程度の差はあれ、どこも大学受験に対応したカリキュラムを採用している。

具志川高校（うるま市）やコザ高校（沖縄市）、読谷高校（読谷村）は、生徒全員が大学進学を目指すカリキュラムとなっているし、実際、卒業生の過半数が大学に進学している。

この3校が学力的に少し厳しい場合は、以下に挙げる公立高校7校の学力最上位クラスを選ぶとよいだろう。学力最上位クラスの具体名も併せて記す。
・前原高校（うるま市）：普通科文理コース特進クラス
・北中城高校（北中城村）：普通科特進クラス
・宜野湾高校（宜野湾市）：普通科普通コース特進クラス
・北谷高校（北谷村）：普通科特進クラス
・美里高校（沖縄市）：普通科特別進学クラス
・石川高校（うるま市）：普通科特別進学クラス
・西原高校（西原町にしはらちょう）：普通科特別進学コース

西原高校は中頭通学圏外の高校だが、宜野湾市の一部と中城村からは学区制限なしで入学できる。

沖縄県の公立高校普通科は「特進クラス」を設けていることが多く、基本的には希望者のうち入試の成績が良い人から優先的に選ばれる。「特進クラス」に入れなくても大学に行けなくなるわけではないが、「特進クラス」とそれ以外で使用する教科書の難易度を変えている高校もあるので注意しよう。

沖縄県の公立高校の多くは公式サイトで「学校要覧」という資料を公開しており、ここに使用する教科書が記載されていることが多い。自分の志望校の「学校要覧」はチェックしておこう。ちなみに、私が書いた記事「高校の教科書は難易度がバラバラ！」に数学の教科書の難易度一覧を掲載している。

私立高校の選択肢は少ないが、沖縄カトリック高校（宜野湾市）の普通科スタンダードコースやベーシックコースが、大学には行きたいと思っている生徒に対応したカリキュラムを採用している。

大学以外の進路も考えるなら

商業科志望者は、具志川商業高校（うるま市）か中部商業高校（宜野湾市）のどちらかを選ぶ。ただし、中部商業高校の生涯スポーツ科はスポーツの授業が多く、どちらかというと体育科に近い（簿記の授業も少しある）。

工業科志望者向けの高校は、美来工科高校（沖縄市）と美里工業高校（沖縄市）である。この2校がもつ工業科に属する学科は以下の通りだ。
美来工科高校：機械システム科・自動車工学科・電子システム科・土木工学科
美里工業高校：機械科・電気科・建築科・設備工業科

宜野湾市からだと美来工科高校も美里工業高校も若干遠いので、浦添工業高校（浦添市）が有力な選択肢になるだろう。浦添工業高校がもつ工業に関する学科は情報技術科・建築科・インテリア科・デザイン科の4学科で、「機械」がないことに注意。

農業科志望者は、中部農林高校（うるま市）のうち、熱帯資源科・食品科学科・園芸科学科・造園科のどれかを選ぼう。ちなみに、熱帯資源科は2年生から資源コースと動物コースに分かれ、資源コースでは熱帯作物の栽培を、動物コースでは小動物や犬の飼育を主に学ぶ。

美里工業高校（沖縄市）と浦添工業高校（浦添市）には調理科がある。その名の通り調理の授業が多くあり、卒業と同時に調理師免許が取得できる。

高校で福祉を学びたい人は、中部農林高校（うるま市）の福祉科へ。ただしここを卒業しても、介護福祉士国家試験受験資格は得られない。

情報の専門科目を多く学びたい人には、美来工科高校（沖縄市）のITシステム科やコンピュータデザイン科が向いている。

専門に特化したくはなく、公立高校志望であれば、前原高校（うるま市）、北中城高校（北中城村）、宜野湾高校（宜野湾市）、北谷高校（北谷村）、美里高校（沖縄市）、石川高校（うるま市）、西原高校（西原町）の学力最上位クラス以外のクラスを検討することになる。いずれも、大学進学だけでなく短大・専門学校進学や就職を検討する人が多い普通科だ。
このうち、前原高校の普通科総合スポーツコース、宜野湾高校の普通科スポーツ・健康コース、西原高校の普通科健康科学コースでは、スポーツの授業が多めにある。また、前原高校の普通科英語コースでは英語の授業が多めにあるし、宜野湾高校の普通科情報処理コースではパソコンの技能・資格取得を目指す授業がある。

2023年に開校した私立の仙台育英学園沖縄高校（沖縄市）は、まだ卒業生がいないので進路についての評価はできないが、同校が公開しているカリキュラムによれば、大学進学を目指すことはあまり重視しておらず、ICT（情報通信技術）など就職後に役立つスキルを学ぶことを重視している。

全日制以外の高校は

公立のコザ高校（沖縄市）と中部農林高校（うるま市）が定時制課程をもつ。コザ高校の定時制課程は商業科、中部農林高校の定時制課程は農業科で、どちらも夕方から授業がある。また、公立の宜野湾高校（宜野湾市）が通信制課程をもつ。
私立では、N高校の通信制課程の本校がうるま市にある。
また、仙台育英学園沖縄高校（沖縄市）の通信制課程の校舎が、仙台育英学園沖縄高校をスクーリング会場に設定している。

沖縄県の高校入試事情

2025年度から公立高校入試制度が変更されたこともあり文章量が多くなったので、別の記事に分けて記載した。詳細は以下の「沖縄県の高校入試事情」をご覧いただきたい。

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