マイナーだっていいじゃない
まず、上の写真を見て欲しい。
お花がのっかてますよね?このお花、何で出来てるかわかります?
普通に考えたら、毛糸?そう思われそう。
でも、ブッブ―――。不正解!
正解は・・・
なんと、お砂糖でした。
正確に言うと、お砂糖と卵白を練り合わせたロイヤルアイシングというものに、着色して、細い口金を使って、絞って作ったものです。
もちろん、毛糸らしく見えるには、そう見えるような工夫をしてありますよ。
それらしく見えるようにする、そこが私のオリジナルです。
私の職業は、ちょっと気取った言い方をすると、シュガーアーティスト。
Smile Sweets(スマイルスイーツ)という屋号で、2011年に熊本で開業しました。
そもそも、シュガーアートって何?
ですよね?
シュガーアートとは、一言でいえば、イギリス発祥のケーキデコレーションの技術です。イギリス王室のウェディングケーキを作る技術として始まり、イギリスでは文化に根付いたものです。最近は時代の流れで、家庭で手作りする人は減っているようですけれど。
日本の洋菓子はフランス菓子が主流だから、イギリスでどんなケーキを食べているかなんて、お菓子のマニアでも知っている人は少ないでしょう。
日本でケーキと言えば、生クリームにいちごが乗っかっているのが一番ポピュラーだけれど、あの生クリームスタイルのケーキのほうが、実は世界ではマイナーなのだ、多分。
私は約25年前に、東京で世界的に有名なシュガーアーティストのニコラス・ロッジに出会い、彼の魔法にかかり、すっかりシュガーアートの魅力に取りつかれてしまった。
彼の魔法の威力は強力で、私は寝ても覚めてもシュガーアートの事ばかり考えるようになってしまったの。
そして、10数年前離婚した私は、無謀にもシュガーアートで生きて行くと、開業に至ったわけ。
それからの私は、少しでもシュガーアートをメジャーにしたいと思って、いろんな努力をしたわ。SNS、ブログ、イベント等々。
一人でも多くの人にシュガアートの魅力を知って貰って、
「わぁ~、ステキ!私も欲しいわ~」
「私も習いたいわ~」
「誰かにプレゼントしたい~」
そんな人が沢山いなければ、仕事にならないのだから。
私も頑張ったと思う。この手のかかるを子を何とかメジャーにしようと。
でも、残念ながら、途中で気づいた。これはなかなか難しいぞ、と。
時代は安・近・短を良しとする流れになり、技術をマスターするためには、数回どころか、数年もかかるシュガーアートは、時代に逆行する。
材料や道具は輸入品がほとんどで、購入できるお店も限られる。
お砂糖という素材を使っているのに、食べられるの?食べられないの?という疑問は常に付きまとう。
出来上がった物は繊細で壊れやすいから、そう簡単にポンと宅配便で送れるものでもない。
大事な大事な子を、悪く言うのは忍びないけれど、メジャーになれない理由を上げようとしたら、次から次へと出て来てしまう。
私はだんだんと苦しくなってきていた。
どうしてもシュガーアートをメジャーにしたくて、ただ執着しているだけなのかもしれない。少し離れてみたら、楽になるかもしれない。
そして、コロナ禍が、さらに追い打ちをかける。
上手くいきかけていたウェディングの仕事も殆どなくなった。
私の生活の、いや人生の中から、シュガーアートの占める割合が小さくなった。それでも、全く無くなったわけではなく、小さな種火だけが残った感じ。
細々と、仕事としてのシュガーが存在していた。
そんな思いを、友人に語った時に言われた言葉。
「シュガーを仕事から卒業させてあげたら?」
ああ、そうかもしれない。
うすうす気が付いていた。
シュガーアートをどうしてもメジャーにしたくて、仕事として成立させたいから、苦しいんだ、と。
もう一度、知り合った頃のように、純粋に楽しむことを取り戻そう!
そう思うと、シュガーの種火の力が息を吹き返し、紅い炎へと変わって行くようだ。
今の私は思う。別にメジャーにならなくてもいいじゃない。
そのマイナーな所にこそ、シュガーアートの魅力はある。
シュガーアートにはいろいろなジャンルがある。
私は冒頭の写真のように、ロイヤルアイシングを使って何かを表現することが好き。
真っ白な粉糖という素材から作り出す世界は、ゼロからイチを生み出すアートで、いかようにも自分を表現できる。
色や形にいくらでも自分の個性をのせられる世界。25年経っても極めるという事が無い世界。
25年目にして、私はまた新たなマイナーな世界の扉を開ける。
なぜ砂糖なのか?
その質問自体がナンセンス。
だって、その質感は砂糖じゃなきゃ出せないから。
アートに意味を持たせる必要があるのか?
それ自体が美しいか否か。
心を動かすか否か。
大事なのはそこじゃない?
マイナーだっていいじゃない
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