「開びやく以来の新年」高村光太郎

一年の目方がひどく重く身にこたへ、
一年の味がひどく辛く舌にしみる。
原子力解放の魔術が
重いつづらをあけたやうに
人類を戸惑ひさせてゆるさない。
世界平和の鳩がぽつぽとなき、
人類破滅の鎌がざくざくひびく。
横目縦鼻の同じ人間さまが
まさかと思ふが分らない。
胸を定めてとそを祝はう。
重いか軽いか、ともかくも、
開びやく以来の新年なんだ。


読書に朗読に、ご自由にお使いください。
出来るだけ誤字脱字の無いよう心掛けましたが、至らない部分もあるかと思います。個人的文字起こしなので何卒ご容赦下さい。

底本:「高村光太郎全詩集」新潮社
昭和四十一年一月十五日発行
「典型」以降(昭和二十五年~昭和三十年)

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