「開拓に寄す」高村光太郎
岩手開拓五周年、
二万戸、二万町歩、
人間ひとりひとりが成しとげた
いにしへの国造りをここに見る。
エジプト時代と笑ふものよ、
火田の民とおとしめるものよ、
その笑ひの終らぬうち、
そのおとしめの果てぬうちに、
人は黙つてこの広大な土地をひらいた。
見渡す限りのツツジの株を掘り起こし、
掘つても掘つてもガチリと出る石ころに悩まされ、
藤や蕨のどこまでも這ふ細根に挑まれ、
スズラン地帯やイタドリ地帯の
酸性土壌に手をやいて
宮沢賢治のタンカルや
源始そのものの石灰を唯ひとつの力