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サンフランシスコの混浴サウナで石油王の娘と一緒に

2018年4月28日15:03
サンフランシスコ湾岸を走るUberの後部座席、
僕は少し落ち着かずにいた。

研修滞在中のわずかなフリータイム、
「予定があるんで!」と誘いを遮るようにホテルを飛び出した。

サンフランシスコの対岸(通称イーストベイ)を臨むベイエリア。
片側には住宅が多く立ち並ぶエリアで僕を乗せたプリウスが止まった。

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本当にこんなところにあるのか?
サンフランシスコは治安が不安なエリアが一部ある、
さらにここはダウンタウンから少し離れた場所…
不安になりかけると、唐突にそのビルはあった。



ARCHIMEDES BANYA< アルキメデス バーニャ>

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バーニャとはロシア語でサウナのこと。
そう、当時サウナをはじめたばかりの僕は、
出張や旅行ごとにご当地サウナを巡ることを楽しみにしていた。

日本を発つ前、サンフランシスコのご当地サウナという
千載一遇のチャンスを前にリサーチにも力が入った。
そこで出会ったのが、このアルキメデス バーニャだ。
しかし、その検索結果をみても半信半疑だった。
今でこそ公式ホームページにも情報が増えたが、
当時は日本語で紹介されたブログ等もほとんどなかった。
しかし、どうやら本当にアルキメデス バーニャは混浴らしいのだ。

????

僕は混乱した。あ、ユネッサンス的な?水着着用の?
いや、慎重を期して英語の説明を読み返しても、
バーや休憩エリア以外では「服を着るな」とわざわざ明言している。

もちろんサウナは大好き。
しかし、混浴はおろか、異国でのロシアサウナの立ち振る舞い、
お風呂マナーの類がまったくイメージできない状態で行ける??
「ギニア人が情報なしで墨田の銭湯に突撃するようなものだ。無理。」
「いや、きっと日本の湯治みたいにどうせ爺婆ばかりで気楽だろう。」
僕のなかの悪魔と天使が囁きを続け、
当日までに何度も来訪をあきらめそうになった。

そんなこんなでようやく来たミッション当日。
かなり興奮で浮き足立っていたようだ。
その証拠が、Uberでサウナに着いた直後に撮った写真にある。

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なんで!なんでサウナ前の路上で、お兄さんと犬を撮ったの?!
(外観は1カットしか撮れていなかったのに!)
Can I take your picture?と、許可を取った記憶があるが、
当時のテンションはいまだ説明できない。
(よくみると微妙な顔のお兄さん。。)

謎のテンションを抱えたまま、恐る恐る店内へ入り、
受付で基本料を払う。3時間で47$(2020年5月現在)
(西麻布のアダム&イブを超える新次元の料金!)

ロッカーにはバスローブとタオル、ビーチサンダルがある。
(最初サンダルに気づかずサウナで火傷しかけた)

着替えを終え、浴場へ出るときの緊張を今でも覚えている。
タオルを携えてはいるものの、ここから未知の混浴エリア。
近所のスーパー銭湯なら隠すことなく大手を振って歩けるが、
勝手わからぬ異国のロシアンサウナでは腕の振りすら定まらず、
不自然に前方でタオルをひらひらさせながら移動していた。

「大丈夫、きっといるのは年齢層高めの紳士淑女だ緊張することはない。」

しかし、その自分への励ましも、3メートル先で無意味に変わる。
天井が高く白を基調とした明るく広々とした浴場に感動した刹那、
視線を右に移して目にした光景の異常さに、
意識を飛ばさずに保っているのがやっとだった。

じょ、女性、女性、
じょ、女性の4、5人のグループが
風呂の横でキャッキャと楽しそうに立ち話しをしていた。。
全裸で。

正確には、タオルは持っている。
しかし、僕の知っている女性の入浴シーンは、
湯けむり旅番組でみるように、バスタオルが巻かれている。
(ex.バスロマンCMの細川ふみえ)
しかし、彼女らはあまりに無防備。
タオルを首にかけているだけの人もいる。
え、え!?え、こんな感じでいくの!?
シニアじゃないじゃん、なにこれ女子会!?サークル?!
混乱しながら、瞬時に脳内ロシアサウナマナーブックをアップデート、
そうだ、こちとらお風呂の国からきたライジングサン
銭湯ストロングスタイルのプライドがある。
一世一代のポーカーフェイスで戸惑いを見事に隠し

切れなった…。
もはやアキラ100%状態、不自然な動きのまま、
近くのサウナ室に駆け込むしかなかった。
「と、とんでもないところに来ちまった。。。」
入ったサウナは日本でもよくみるドライタイプ、
いわばホームサウナで息を落ち着かせながら
どうやってメインのロシアサウナに辿りつこうかイメトレを繰り返した。
もし通路でさっきの彼女らが前方からきたらどうする??
挙動不審にならず「ハァイ」とか言えるのか俺!?
はぁ、しかし完全に誤算だった。
サンフランシスコのロシアサウナは、
爺さん婆さんが慢性の疲れを癒す湯治場なんかじゃなく、
若い世代も楽しめるちょっとリッチな本格アミューズメント施設(全裸)として設計されていた!

その後、なんとか目当てのロシアサウナ(低温スチームサウナ)で温まると
裏メインディッシュともいえる水風呂へ。
大きな吐水口から流れ落ちる気持ち良い水流を堪能している時に次の試練が舞い降りる。

褐色の肌に白目が印象的なアラブ系の美女が突然現れ、
笑顔を讃えて水風呂の階段を降りてきたのだ。全裸で。


な、なにこれーーー!!
確かに広い水風呂だが、まさか同じタイミングで入ってくる!?
自由の国、自由すぎるー。
神様は意地が悪い。
直視できるわけないじゃん!
しかし、あきらめたら試合終了ですよ。安西先生の声がする。
僕はストイックにサウナを楽しむ男を演じながら
チャレンジをあきらめなかった。
かつてバスケットで鍛えた視野の広さで、ノールックプレイは得意だ。
しかし、別の不安もある。
正気でいられるか?改めて自分に問いかける。
うん大丈夫。僕の中のリトルホンダもサムズアップしている。
上から流れ落ちる水流に視線を隠しながらシュートコースを探す。
両手に水をすくう、ストレッチのふりなど、巧みにフェイクを入れる。

持てる技術をすべて注ぎ込んだ激闘だったが
石油王の娘がわりとすぐ水風呂を出るという不完全燃焼で終わった。

滞在2時間足らず、完全に時間配分ミスだ。
こんな天国と知っていれば前後の予定を割愛してもよかったんだ。
幸福と反省の大洪水。
しばらく放心状態が続き、その後ホテルまでどうやって帰ったかを覚えていない。

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