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立ち読み所感 001:体はゆく

所感第1弾は、
「体はゆく」(伊藤亜紗・著、文藝春秋、2022年)。

この本を手に取るきっかけは、
新聞に掲載されたあるエッセイストの書評からである。

何せタイトルに“体”という文字があると、
自分の職業柄(理学療法士)見逃すことができない。
“体”をタイトルにした本は限りがないほどあるので、
全てを手に入れるはずもないが、
このタイトルにはまず惹かれるものがあった。

さらに書評を読んでみて、
絶対に買おうと決めたわけである。
そのキーポイントは大体以下の3つ(の文章・言葉)である。


その1.
書評中に載っている著者の言葉にまず引っかかった。
いわばフックとなる言葉であった。

その言葉とは、
私たちは、自分の体を完全にはコントロールできないからこそ、
新しいことができるようになる
」である。

自分の身体をコントロールするとは、
別の言葉に言い換えると、
“運動制御(motor control)”という。
また新しいことができるようになるとは、
“運動学習(motor learning)”という。

理学療法士が基盤とする重要な三つの概念
〜運動制御・運動学習・運動発達(motor development)〜
のうちの二つが関係しているとなれば、見逃すことはできない。

しかも、
運動制御の限界とそれこそが運動発達につながるという提示は、
とても刺激的な気がした。
これはちょっと発想の転換を必要とするのでは?
とも感じた。読むのが楽しみなる一瞬である。


その2.
ここに紹介される事例には、
人工筋肉エクソスケルトンという、
大リーグ養成ギプス(漫画「巨人の星」参照)を想像させるような
モノがあるようである。

上手い技術を持つ人の動きを体感できるようなモノがあれば
面白いのになぁと、かながね思っていた身としては、
これだけでも一読の価値ありだなと確信した。


その3.
この本の中で紹介される研究者の方の言葉。
意識をオーバーライド(上書き)する」。
書評中には、
人間はどうやら意識下で体を制御するより、
予想を超えた自己生成を遂げる可能性がある、
というようなことも書かれている。
これが、“オーバーライド”の意味するところらしい。

その1.で示した、体のコントロールとは
意識でのコントロールを指していて、
その(体の)コントロールには限界があり、
意識しない形での身体運動・動作をして試行錯誤の中で
運動学習していく、ということなのかと思った。

体はあくまで神経によるコントロールによって動きを生成しているので、
コントロールを逸脱するとは、何らかの病的動きを指している
と思いやすい。
しかし、
神経によるコントロールには無意識によるものも含まれているので、
その意識しない動きをフィードバックして、
のちに意識によって定着させていく、それこそが運動学習なのでは、
と自分なりに定義してみると、すごく腑に落ちたわけである。

以上3つの言葉(文章)に大いに引っ掛かりを得て、
この本を読む前からワクワクした気分で眺めている次第である。

この本を読破した暁には、
「読後所感」としてあらためて紹介したいと思っている。
どうぞお楽しみに。

参考.
立ち読み著書:体はゆく


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