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光野朝風
2016年9月5日 01:49
まことしやかに、うわさが立った。最初はとても曖昧だったが、徐々に見る者も多くなった。うわさが尾びれをつけるものとは明らかに違う。 門司港駅の駅員の間で、ホームに日に二度、赤いコートの女が立つとのことだった。 何故一乗客のことが噂になったかと言うと、春夏秋冬決まってコートを着ている、と言うのだ。だが夏近い頃と、秋ごろには出てこないのだと言う。 冬や春先、秋の終わりならばコートも気に
2016年9月29日 02:38
おしゃべりで悪意はないはずなのに、人の秘密を共有することで皆運命共同体のように勘違いする女がいた。 成宮璃理は一人っ子で友達の作り方がわからなかった。父母とも仕事で留守をしがちなのに、幼稚園の頃から家事はおしつけられるようにして受け持っていた。嫌われないことが一番居心地がいいと知った。 小学二年生の頃、誰かの秘密を一番有力な女子グループに打ち明けることで、小さないじめを避けられたこと