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短編小説

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2019年8月の記事一覧

白い手

「離れたい」
 と田崎は思った。
――離れたい。
 何からだろうか。仕事だろうか。生活だろうか。それとも人生からだろうか。
 よくわからない。仕事では一日を過ごすので精いっぱいだ。赤字赤字と聞かされ、効率を求められ残業代を請求するごとに叱責と毎日の嫌味が多くなる。ついには細かな仕事の動きまで指摘されるようになってきた。
「うんざりだ。みんな死ねばいい」
 何社かを転々としてきた田崎は決して有能なわ

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