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【大好評でも黒字になるとは限らない】 エンタメコンテンツの支出バランスの難しさ

こんにちは。演劇・エンタメ分野をビジネス視点で語るAsakawaです。

これまで度々、
エンタメコンテンツを作り上げてそれで利益を得たいのであればその目安として舞台など生ものイベントの場合・・・、

一公演あたりの動員数が最低500人以上はないと厳しい、300人以下だとせいぜいその公演をやるにあたりかかった費用分しか取り戻すことはできないであろう、

みたいな基準を示してきました。

つまりは一公演の動員数が500人以上は見込める舞台は「商業演劇」の部類に入るとも言いました。

これだけを見れば興行的に成功させたければこのくらい動員できればいいのか〜と思ってしまいがちですが・・・もちろんそんな単純なものでもないというお話になります。

今週こんな記事を目にしました↓

久しぶりにテレビドラマで大きな話題を呼んだ『V I V AN T
日本国内では大変好評でしたがまさかの「大赤字」というニュースです・・・😱

これを読んだ方の中には「えっあんなに評判良かったのに赤字だったの?」と驚いた方もいるかもしれませんが、ここに例えコンテンツ自体は大好評でもそれに比例してビジネス的にも儲かるとは限らない難しさがあります。

個人的には今の日本のテレビ局の体力を考えたら赤字覚悟だったのかな?というのが伺えますが・・・国民は無料で観られたわけでありますし、ならスポンサー収入だけで大丈夫だったのか?
(ただ記事では世界に向けて配信もしたが海外での反応がいまいちだったそうなので、それが見込み違いで痛手となった可能性もありますが)

少しでも舞台や映画などの制作に関わったことがある方であれば分かると思いますがエンタメコンテンツ、中でも舞台・映画・音楽ライブなどのイベント系はもの凄くお金がかかります。

↑この記事でも書きましたが私が関わった、
商業目的ではない舞台でさえ一千万近くのお金がかかります。

なら商業演劇となれば基本的にはもっとお金がかかるわけですが、そのかかった費用は当然チケット・グッズ収入、スポンサーからの支援、補助金などで賄うことになるわけです。がこのバランスを見誤るといくらチケットは全公演完売でした!となっても残念ながら赤字になってしまう訳ですね。

このような生ものイベント系のコンテンツは分かりやすく言うと・・・、

せっかくコンビニやスーパーを建てたのに一週間以内、長くても一ヶ月とかで取り壊してしまう・・・

これに近い効率の悪いことをしています・・・😓

要は期間が限られておらず年中無休とまではいかなくても年間通してそのイベントを開くことができるのであればやがて黒字になるでしょう。でも会場の貸し出し期間が決められていてそうはいかないから難しいのです。

それを補うために主に音楽ではライブの模様を映像として残して終演後も何年にも渡ってお金を生み出せる映像作品を作りますよね。映画でも上映期間が終わってもその後に家でも楽しめるように映像作品として販売する流れです。

ちなみに音楽ライブでは最大キャパシティのドーム・スタジアムクラスの会場を満員にできても基本的には赤字になるとよく当事者達が言っております。

さらに規模を大きくし過ぎて赤字になったケースも。
1990年代はCDが売れに売れた時代ですよね。テレビの影響も大きくテレビで取り上げられたバンドや歌手のライブ動員数も凄まじいものでした。

そんな時代を象徴するライブとして当時絶大な人気を誇った二大バンドであるGLAYやL'Arc〜en〜Cielが一公演で何十万人規模のライブを行ったのも音楽ファンの間では有名だと思いますが、

少なくともL'Arc-en-Cielはこのような大規模のライブを行ったことにより、

莫大な費用が掛かるツアーとなり、興行収益は大赤字だったという

1999 GRAND CROSS TOUR(ウィキペディア)

と当時のスタッフや事務所の社長が証言しております・・・😓
一公演10万人動員しても赤字になるんですからね、恐ろしいですよね💦


こうなってしまうのも、いくら何万、何十万人の動員が見込めるといっても費用をケチってしょぼいステージセット、貧相な照明などの演出にするわけにはいかないわけですよ。それだけのお客さんを安全に誘導するためのスタッフも動員数に応じて相当数必要になっていきますし。

むしろビジネス的な事は度外視してせっかくやるならあっと驚くような事をやってやろうぜ!と意気込んでしまうかもしれません。上記のL'Arc-en-Cielのライブは記事を読む限りそのような気概の結果とも言えると思います。

しかしこのような現代の常識では不可能ではないか?と思われる規模のライブも、時代が良かったからというのもあると思います。

今後できるのか分からない事に挑戦したという意味ではその後も多くの人々の記憶に刻まれたことには成功したのではないでしょうか?その甲斐もあった今でも両者は根強い人気を誇っていると。

このようにいくらそれなりに資金があってもエンタメ・イベント系のコンテンツ作りにかかる費用はその気になればいくらでもかけられる、天井知らずです。

しかし入ってくる収入は期間も含めておおよそ限られている・・・重ねてこの収支のバランスを見誤るといくら大盛況チケット全公演完売!大きな話題となり高視聴率!となっても大赤字になるということは大いに有り得る事だとは頭に入れておきましょう。

では今回は以上になります。ここまでお読みいただきありがとうございました。


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