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あやかしのなく夜に

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あやかし異能ミステリー、「あやかしのなく夜に」まとめ 創作大賞のミステリー小説部門に参加しています
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2024年6月の記事一覧

あやかしのなく夜に 29話

29話 カフェ いくら化け物に出会おうといくら危険な目に合おうと、日常はやってくる。
 家に帰りリモを抱きしめ爆睡して、起きたらもう月曜日だった。
 朝の七時。
 僕はスマホの画面を見つめ深いため息をついた。
 学校かぁ……行くのだりぃ……
 でも親がサボらせてくれるわけがないので仕方なく俺は起き上がった。

 リモが付いてきたがったけどさすがに狸を高校に連れて行くわけにはいかず、帰りに迎えに来て

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あやかしのなく夜に 28話

28話 役割 僕たちが社を離れようとしたときだった。
 ごぉっと大きな音を立てて風が吹いた。

「おおう」

 腕の中でリモが驚きの声を上げる。
 風は大きく枝を揺らし、がさがさと音を立てる。

 あぁ……アァ……
 
 その風の中に泣き声が混じっているような気がした。
 リモも気が付いたようで、辺りを見回している。

「聞こえたか?」

「はい。泣いているように聞こえましたが……なんですかねぇ…

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あやかしのなく夜に 27話

27話 それでも会いたい
 僕はリモに再び尋ねた。
「なあリモ、あの日和ちゃんに憑りついているやつをどうにかする方法ってないの?」
「憑りつくってことはなにかしらの未練があるんじゃないかと! だから願いが叶えばきっと憑りついているやつは離れるんじゃないかなって思うんですけど」
 化け物の願いってなんだよ……
 この間会った幽霊は、腹をぶった切れ、だったしなあ……きっと想像の斜め上なんだろうなあ……

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あやかしのなく夜に 26話

26話 彼女のこと 臨の手から電気が放たれ、それは化け物――日和ちゃんと思われるものに向かっていく。
 化け物はひょい、と左に跳んでそれを避けるとその背中から黒い手が伸びていった。
「臨!」
 その手の先端は尖っていて、もしあれで刺されたら……嫌な想像が僕の頭に浮かぶ。
 黒い手は臨へとまっすぐに伸びていくが、臨はそれを後ろに跳んで避けた。
 なんなんだあの化け物……黒いあの手は日和ちゃんに憑りつ

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あやかしのなく夜に 25話

25話 遭遇 社に向かおうとすると、背後から声がかかった。
「あぁ、やっぱりいた」
 聞き覚えのある青年の声に振り返ると、そこに喫茶店のマスターである初芝さんが息せき切らせて現れた。
 ってなんでこの人がいるんだよ?
 彼は僕らに歩み寄ると、僕が抱きかかえるリモを見つめて言った。
「……ここに来たら彼女に会えるんじゃないかって……そう思ったらいても立ってもいられなくなったんだ」
「彼女って……」

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あやかしのなく夜に 24話

24話 ヒトウバン 十六時をすぎるとだいぶ辺りが暗くなる。
 夕闇の中を僕たちは、天狐の山に向かって歩いていた。
 山は大学病院の裏手にあるから、大した距離は歩かない。
 山の周りは街灯が少ないため人通りも少ない。犬の散歩の人とすれ違う位で静かなものだった。
 遠くに緊急車両のサイレンが響く。また誰か亡くなるのだろうか。
 今の仕事をはじめてから、僕はサイレンの音に敏感になっていた。
 サイレンの

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あやかしのなく夜に 23話

23話 報告 臨は僕に温かいほうじ茶を買ってきてくれた。
 僕は身体を起こしてベッドに腰掛け、ペットボトルを受け取りそのふたを開けた。
「ありがとう臨」
「真梨香さんが報告聞きたいって言っていたけど、大丈夫?」
 そういえばそんなメッセージを貰っていたっけ。
 猫惨殺事件の途中経過を聞きたいって。
 正直大したことはわかっていないけど、でも報告しないわけにはいかないもんな。
「僕は大丈夫だよ」
 

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あやかしのなく夜に 22話

22話 記憶
 なんとか仮眠室にたどり着き、貸与されているIDで仮眠室の扉を開ける。
 中に入ると、リモと臨が何やら話をしていたけれどそんなものに構ってはhさいられなかった。
「おぉ! 紫音さんお帰りなさい!」
「紫音……?」
 リモが弾んだ声で言った後、臨が不審そうな声で言う。
 僕はふたりに構う余裕はなく、靴を脱ぎそのままベッドへとなだれ込んだ。
 あー、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
 臨が斬った

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あやかしのなく夜に 21話


21 仕事はいつも突然に

 やることが増えた。
 猫惨殺事件の犯人を捜しつつ、リモの友達である日和ちゃんを捜す。
 最後にその日和ちゃんに会ったのはあの喫茶店のマスターだから、あの人にもう一度会いに行った方がよさそうだな。
 そんなことを考えていると、臨がお盆を持ってやってきてパスタがのった皿をテーブルに置いた。
 ミートソースのスパゲティだ。
 トマトと肉の匂いが空腹を刺激する。
 そしてリ

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あやかしのなく夜に 20話

20話 言い伝え 僕は腕の中にいるリモに向かって言った。
「いったいなんなんだこの山」
「天狐が降りた神聖な山らしいですからねぇ。妖怪変化を引き寄せちゃうんですよ!」
 神聖なのに妖怪や幽霊を引き寄せるとかどういうことだよ?
 おかしくないか?
「昔からそうなのか?」
「昔の事は知りませんが、ここは磁石みたいなものですよ。強い力に妖怪や幽霊たちが引き寄せられてしまうんです」
 迷惑な話だな。
 山

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あやかしのなく夜に 19話

19話 社 分かれ道から歩いて五分くらいだろうか。
 少し開けた場所に真っ赤な鳥居が見えた。
 手入れされている様で雑草は生えておらず、風が吹くたび枝から枯葉が舞う。
 鳥居は塗り直してさほど時間が経っていないだろう。鮮やかな朱色をしている。
 と言う事は、この社は大事にされていると言う事だろうか?
 子供の頃遊びに来ていた時は大きく感じていた社だけれど、今改めて見るとそこまで大きくはない。
 山

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あやかしのなく夜に 18話

18話 昼の山 結局リモは口を割らず、僕たちとしても山に用事があると言う事でカフェを後にした。
「またおいで」
 なんて言ってくれたものの、正直来づらい。
 自転車の籠の中で震えているリモに、僕は声をかけた。
「リモ」
「……はいっ!」
 リモは異常に驚いてリモはこちらを見上げる。
「さあ何知ってんのか話してもらおうか」
「な、何のことですかねえ」
「ひよりって誰?」
「いやー……それが……口止め

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