日記79 古井由吉『辻』
とりあえず本文に目を通したので。
この連作短編の題にもなっている「辻」は、人生のわかれ道と捉えてほぼまちがいないと思う。何度もふりかえったり、そこを越えないが気にかけていたり、そっちには普段行かないとか、他人とすれ違ったりする。辻の、進まなかったほうに延びる道は、他人や、自分のありえたかもしれない人生と思われる。その証拠かのように、当初登場した語り部の出会った、あるいは見知っていた人物の人生の話へと飛ぶ短編がいくつもある。放射状に分かれるだけでなく、別々の道が集まってくる地点としての辻という意味もあるだろう。
さっと流し読みしただけなので、とりあえずこれだけをメモ程度に。
(2023.11.10)