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【エッセイ】2日ぶりの再会
姉から<2日ぶりの再会>と題した動画が送られてきた。
職場で音を消して見た。
夕暮れのオレンジの光の中、向こうのほうからニャギが歩いてくる。のそのそ……途中少し急いで、水たまりを越える。カメラも少しニャギに向かっていく。
何を言っているのか、音が無くてもわかる気がした。
帰宅してから、音声つきで見た。
風の音『ぼぼぼ……』
姉『ニャギー……ニャーギ―――!』
風の音『ぼぼぼ、』
ニャギ『にゃあ~、にゃー』
姉『ニャギー』
想像したとおりの内容だった。何見せられてるんだか。
ニャギは近ごろ留守がちだ。2、3日ぶりに帰ってきてはエサをねだり、満足するとまた出かけていく。これだからオス猫は。
しかし姉によると、ニャギは猫界では弱いらしい。先日も別の猫との威嚇合戦のあと、姉がなだめても震えが止まらないほど怯えていたらしい。だから、なるべく強い猫に見つからないように出歩くのではないか。
いつもニャギの帰りを待っている姉と母はそのように分析している。
帰ってくるたびにやせている気がするけど、暖かくなったからかな。大丈夫かな。実家に帰ると、みんな猫の話ばかりだ。
どうでもいいけど、ちゃんと元気な姿を見せてくれないと猫のエサ係たちが心配していけない。
「まったく、留守にしてもいいから、1日おきくらいに姿を見せて生きてるか確認させてほしいもんだ」
そうだそうだ、と適当に援護射撃をして姉の機嫌をとっておく。
でも暖かい季節だからな。冬になったらまた、ぬくぬく太って馬屋に居つくんだろうけど。
そんなことを思っていたら、外から姉がよく通る声で「ニャギー!」と呼ぶのが聞こえた。窓からのぞくと、馬屋の前で姉と母が寝そべったニャギをちやほやしている。
また帰ってきたらしい。どれ、私も様子を見てこよう。裏口でつっかけを履く。
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