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【エッセイ】真夜中のホットケーキ

 夜中に目が覚めた。
 後頭部や首筋がなんだかジンジンする。この数日つづく肩と首の不調のせいだ。
 枕をずらしてみても、寝返りをうってみても、なんだか収まりが悪くて寝つけない。時間は1時30分、それを確認してますます目が冴えてしまった。
 暗がりで壁を見ていると、お腹が減っていることに気付いてしまった。たいへんな空腹ではないが、何かを胃に納めたいくらいではある。
 どうしようかともぞもぞしていたら、ふいにホットケーキミックスの存在を思い出した。3つの小袋のうち、ひとつがまだ残っていたはずだ。卵と牛乳は…ある。そして幸いにも、明日は休みだ。
 そうなってしまうと、もうそのまま寝ることはできなかった。
 起き出して台所の灯りをつけ、真夜中特有のしんとした空気の中で作業をはじめる。
 まず卵と牛乳を混ぜる。牛乳は分量より多く入れる。計らないのでだいたいだ。
 そしてホットケーキミックスを加えてさらに混ぜる。生地の固さをみて、牛乳を足す。
 フライパンを熱し、温まったところで生地を入れる。フツフツと穴が開いてきたら裏返す。小さめのサイズでたくさん焼いたほうが、返しやすいし食べやすい。
 焼き上がった最初の1枚をかじる。うん、いつものホットケーキだ。おいしい。
 そのまま立って手づかみで食べながら、残りの生地を焼いた。ひと様には見せられない行儀だが、見る人などどこにもいない。
 焼き終えるまでに2枚のホットケーキをたいらげ、残りは明日の朝食と冷凍保存用となった。
 勢いに乗って洗い物まで終えて、再び寝床に入ったのが2時30分。お腹も心も落ち着いて、安らかに眠りについたのだった。
 ふだんは早寝早起きを心がけているし、そんな生活が好きだ。
 でも、たまにはこんな夜もいい。

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朝日 ね子
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