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【エッセイ】恋と睡眠

 落ちるというからには、それらはここよりも下のほうにあるのだろう。
 恋に落ちる、という。
 眠りに落ちる、という。
 降りるのではなくて落ちるのだから、自らの意思ではなくハプニングの要領で陥るものであるようだ。
 眠りに落ちるとき、力を入れた覚えのない首筋ががくりと脱力したと感じることがある。そのあとは、なるほど重力のままに布団に沈み込む感覚。落ちるとはこのことか。
 恋も同様であるならば、意図せず重力のままにストンと落ちていくに違いない。
 あわよくば自分から落ちていこうと下ばかり見て過ごしているが、どうやらそれではだめらしい。よく考えたら自分から落とし穴に落ちるドッキリほど滑稽なものもない。知らずに踏み抜くからこそ、自然に美しく落下していくのだろう。
 上を向いて歩こう、なんて聞こえが良いだけの言葉と思っていたけど、恋に落ちるには上を向いて歩く無防備さも時には必要ということなのかもしれない。

(この解釈はきっと間違っているだろうな)
(そうして落ちた恋が文字どおりの落とし穴であるケースも否めないから、やっぱり無防備はちょっとおそろしい)

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朝日 ね子
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