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【エッセイ】暫定目標

 職場の新年会がある。
 想定される話題はふたつ。
「昨年はどんな一年だったか」「新年の目標、あるいはどんな一年にしたいか」

 そんなことを言い出す人が苦手だ。答えるのも苦手だ。しかし答えられないのも悔しいので、答えを用意しておくことにする。
 本物の志じゃなくていい。当たり障りなく、それなりであればいい。

「昨年は、この数年の中では色々と出かけられたと思います。夏には温泉に行き、楽しむことができました」
「今年は引き続き楽しいことができればと思います。遠出もできれば嬉しいです」
「仕事では、計画的に休みをとりつつ、健康に留意して過ごします。少し運動ができれば最高です」

 暫定の目標にしては完璧だ。
 毎年使い回せる当たり障りのなさも、我ながらあっぱれだ。これは長く愛用できる目標ができた。
 あとは肝心の質問が飛んできたときにちゃんと答えを覚えていられるか。お酒を飲みながら雑談に相づちをうつだけで、脳みそは手いっぱいなのに。
 とにかく一夜漬けのごとく、自分で描いた回答を繰り返し読む。言葉が刷り込まれる。
 ああ、このままでは暫定の目標が本当の目標になってしまいそうだ。

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