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【レシピ公開!】しょうゆのように使えて、味はよりまろやかな万能調味料「醤」

「発酵調味料を自分で作る丁寧な暮らし」

 こう聞くといかにもハードルが高そうだが、実は「混ぜるだけでできる」「時短になる」「おいしいうえにキレイになれる」としたらどうだろう。

 第一子の妊娠をきっかけに発酵食品と出合い、その魅力に目覚めたと話すのは、清水紫織さん。2015年に発酵料理教室「神楽坂発酵美人堂」を開いて店主となり、今なお、発酵食品のおいしさや便利さ、面白さに感心する日々だ。

 2021年9月には『はじめてでも、とびきりおいしくなる! 発酵料理のきほん』を、22年9月には『発酵調味料でつくる からだにいい 発酵スープ』を出版。そんな清水さんが言う

清水紫織著『はじめてでも、とびきりおいしくなる! 発酵料理のきほん』(朝日新聞出版)
清水紫織著『はじめてでも、とびきりおいしくなる! 発酵料理のきほん』(朝日新聞出版)

「実は、丁寧な暮らしは簡単だったんです」

 もちろん、発酵には時間がかかる。菌などの微生物たちが作る発酵調味料は、できあがるまでに早いもので6時間。でも、その時間の中で旨味や甘味、食欲をそそる香りや豊富な栄養素が生まれ、いざ料理に使うと、簡単で時間もかからないのに、手間をかけた味になるという。

 真夏の暑さからやっと解放されて、食欲の秋! 清水さんに、しょうゆのように使えて、味はよりまろやかな万能調味料「ひしお」の作り方と、「醤」を使って作るワインと相性のいい3品を教わった。

■醤

日々の食事に発酵食品を取り入れることで、腸内環境が整い、ダイエット効果や美肌効果も期待できる

「醤」の材料は、ごくシンプルだ。

  • ひしお麹(ここでは神楽坂発酵美人堂のまろやかひしおの素を使用。他の市販品でも可) 300グラム

  • 昆布(5センチ角) 1枚

  • しょうゆ 300ミリリットル

  • 水 150ミリリットル

「ひしお麹」は豆麹と麦麹を1:1で混ぜたもの。ここで使っているのは神楽坂発酵美人堂の「まろやか ひしおの素」

 これを、清潔な容器に入れて、清潔なスプーンでよく混ぜる。あとは蓋をして常温に10~14日おき、1日1回、清潔なスプーンなどで下からよくかき混ぜるだけ。麹がやわらかくなり、甘い香りがしてきたらできあがりだ。清水さんが言うように「時間」はかかるが、手間はほとんどかからない。

「醤は気温が高くなるとアルコール発酵しやすいので、できあがったら必ず冷蔵庫で保存し、使用するたびに全体をよくかき混ぜるようにしてください」 と清水さん。納豆を混ぜたはしやスプーンでうっかり混ぜると、納豆菌が入り込み、粘りのある「納豆醤」になってしまうので、要注意。「食べても問題ありませんが、納豆菌は非常に強い菌なので麹菌に勝ってしまうんです」

 醤は、一度作ってしまえば冷蔵庫で4カ月ほど保存でき、継ぎ足して作ることもできるという。

 そしてこの醤さえあれば、ワインと相性のいい秋のおつまみも簡単に作ることができる。まずは、きのこの香りが口いっぱいに広がる「3種のきのこの粒マスパテ」から。

■3種のきのこの粒マスパテ

清水さんによれば、コツは、醤と粒マスタードをなじませるように炒めること。香りで秋を実感できる

 2人分の材料は、以下の通り。

  • しめじ 70グラム

  • エリンギ 60グラム

  • まいたけ 50グラム

  • オリーブオイル 大さじ1

  • にんにく(みじん切り) 1かけ分

  • タイム(手で葉をちぎる) 少々

  • 塩 ひとつまみ

  • 醤 大さじ1と1/2

  • 粒マスタード 小さじ1と1/2

 きのこ類は細かくみじん切りに。フードプロセッサーで細かくしてもいい。フライパンでオリーブオイルとにんにくを熱し、香りが出てきたらみじん切りにしたきのこ類と塩、タイムを加え、蓋をしてしんなりするまでよく炒める。最後に醤と粒マスタードを加えてよく混ぜれば、あとは冷ますだけ。

「バゲットにのせて食べてみて。来客があるときも、あらかじめ作って冷ましておけば出すだけなので、便利です」(清水さん)

■さつまいもとくるみの醤炒め

みりんを加えたら、しっかりアルコールを飛ばすこと。さつまいものホクホク食感がたまらない

 次は、シナモンの風味とくるみの食感がアクセントになる一品を。2人分の材料は、こちらもごくシンプル。

  • さつまいも 1/2本

  • まいたけ 1/2袋

  • くるみ 15グラム

  • しょうが(みじん切り) 小さじ1

  • シナモンパウダー 少々

  • 醤 大さじ1

  • みりん 大さじ1

  • バター 小さじ1/2

  • オリーブオイル 適量

 さつまいもは皮を縞状にむき、1センチ程度の細切りに。まいたけは食べやすい大きさにほぐし、くるみは粗みじん切りにする。フライパンにオリーブオイルを熱し、しょうがを炒め、さつまいもとまいたけに塩ひとつまみ(分量外)を加えて炒める。蓋をしてさつまいもにじっくり火を通したら、くるみを加え、さらに醤、みりんを加えてよく炒め、最後にバターを加えて全体にからめればできあがり。仕上げにシナモンパウダーを振りかけて。

■ぶどうとブルーチーズ、春菊のサラダ 醤バルサミコのドレッシング

油と水分が分離しないようによく混ぜるのは、どんなドレッシングにも通じる鉄則だ

 3 品目は、葉がやわらかい旬の春菊を生でいただくレシピ。材料を見ただけで、ワインが飲みたくなるサラダだ。ここでも分量は2人分。

  • 春菊 3株

  • ぶどう 6粒

  • ブルーチーズ 15グラム

  • レーズン・くるみ 各適量

  • 黒こしょう 適量

  • ドレッシング(バルサミコ酢 大さじ2/醤・エキストラバージンオリーブオイル 各大さじ1/はちみつ 小さじ1/塩 小さじ1/2)

 春菊はよく洗って食べやすい長さに切り、水けを切る。ぶどうは洗って横半分に切り、ブルーチーズは少量ずつのかたまりに切る。ボウルにドレッシングの材料をすべて入れ、乳化するまでよく混ぜたら、器に春菊を盛り、ぶどう、ブルーチーズ、レーズン、くるみを散らし、黒こしょうを挽いてドレッシングをかければOKだ。

 清水さんによれば、ぶどうや春菊は疲労回復効果のある食材。たっぷり食べて、夏にたまった疲労も解消したい。

(構成:生活・文化編集部 森香織/写真:野口健志)