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子どもの言語能力が格段にアップする「見たもの実況中継」とは

 学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、その後もボランティアで育児相談や子どもの学習指導、親や教育関係者らと活発に意見交換をするなど、科学の視点で子育てにかかわる活動を続けている、異色の科学者・篠原信先生が著書『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)の中で明かした、子どもの言語能力が自然とアップする方法を、ここで紹介します。

 勉強の苦手な子は、単語でしかしゃべらないことが多いです。

「うん」「やだ」「ダサい」のように文章になっていませんし、単語のレパートリーもかなり少なめです。その場合、たいてい親や周りの身近な大人が短いフレーズでしか話していないことが多いようです。

 そして、短い言葉でしか話さない子どもは、同じようなしゃべり方の友人と遊ぶ傾向があるので、余計に言葉が発達しにくくなります。

 子どもの言語能力を高めたければ、目にするもの、耳にするものをすべて言葉にして、子どもに語りかけてください。

「見たもの実況中継」です。

「あ! 信号が赤に変わったよ。青になるまで待っていようね」
「あの雲、綿菓子みたいでおいしそうじゃない?」
「赤い看板に、れ、す、と、ら、ん、って書いてあるね。今日はここで食べようか。何がおいしいかな?」

 このように「見たもの実況中継」を赤ん坊の頃から聞かせると、子どもはじっと聞き入ります。そして、その際に、親が文章で話すようにすると、子どももそれをまねるようになります。

 といっても、完璧な文章を話そうと気負う必要はなく、たどたどしくて結構です。文字も、子どもが関心を示さないのに、無理に教える必要はありません。「実況中継」のさなかに目にした文字があれば、親が読めばよいだけです。そのうち、直線や曲線のからまりには、どうやら一つ一つ「音」が決まっているらしい、と子どもは気づきます。

 わざわざ知育グッズを用意しなくても(利用してもかまいませんが)、たとえば浴槽の注意書きを子どもが見ていたら「ああ、これね、安、全、上、の、ご、注、意、って書いてあるんだよ」と、読んであげてください。でも、読めるようになってほしいなんて思う必要はありません。一緒に同じ光景、風景を眺め、それを言葉にして感動や喜びを共有するだけで結構です。

 私たち夫婦が、この「実況中継」を続けたせいか、息子は2歳にならないうちに数字の5を「ご!」と読んだのを皮切りに字を読めるようになり、2歳半で字を書き始めました。

 ただし、字の書き方も教えたことはありません。落書きで線と線の交差が字に見えることを「発見」し、いろんな線を試行錯誤しているうち、「どうやらあの字にそっくり」という書き方を一つずつ見つけていったようです。

 あくまで言葉は実体験に基づいて発達することが望ましく、「いちご」という字を見て甘酸っぱい味を思い起こせないようなら、言葉が上滑すべりになっています。

 そのためには、文字ばかりの学習用教材を与えるよりは、子どもと日常で一緒に過ごす時間に、目にするもの、耳にするものを言葉にして伝えてあげてください。体験と同時に言葉を耳にすれば、言葉に体験という肉づけが伴います。

 さらに、言葉をなるべく文章にして聞かせれば、子どもは「言葉をつなぐ」おもしろさに気がつきます。

 そうすると、論理的思考も自然に磨みがかれます(しかも、親以上に)。

 実況中継を幼い頃から聞いてきた子どもは、自然に国語力も備わるでしょう。

 その国語力は、学習の助けとなるだけでなく、お母さん、お父さんと感動を共有したくて、発達が促されていくのだと思います。