中国がウィグルを弾圧したくなる理由とは? チベット人権問題の見通しも暗いまま
「新疆」は「新しい土地」の意味。新疆ウイグル自治区の総面積は約166万平方キロメートルで、五つある自治区の中で最大だ。人口は約2500万人(2017年)で、そのうちウイグル族が約45%、漢民族が約40%を占めているとされる。
清朝の時代に征服されたが、清末から中華民国期にかけては中国での混乱が続いた。ウイグル族の民族意識も強まり、1933年と1944年には独立国家を建設したが、短期間で瓦解。1949年に成立した中華人民共和国に吸収された。その後の民族主義運動も、ことごとく力で抑え込まれた。
新疆は石油やレアメタルなどの鉱産資源が豊富なうえ、中国にとってはロシア(ソ連)や中央アジアとのバッファゾーンという意味合いもある。中央アジアを経てヨーロッパに至る経済圏をつくる「一帯一路」の一環としても、開発に重点を置いている。こうした地理的な事情から、中国はウイグル族の独立を認めることができないのだ。
さらに中国は、チベット自治区における人権問題も抱えている。チベットの生んだ独自の仏教であるチベット仏教は、かつて東アジアで広い信仰を集めた。
チベットは清朝の支配下にあったが、清の皇帝はチベット仏教を尊重し、指導者のダライ・ラマを保護する立場だった。1912年に清が滅亡すると、チベットは独立を宣言。当時、インドを支配していたイギリスは、チベットをバッファゾーンにできると考え、その独立を承認した。しかし、第二次世界大戦後の1947年にインドは独立。イギリスは南アジアから手を引いた。
結果、チベット独立の後ろ盾は失われ、50年に中国人民解放軍の侵攻が始まった。ユーラシアの内陸に位置する新疆やチベットは、他の有力国が影響を及ぼすことも困難。中国の少数民族問題の見通しは暗いままだ。
(構成:文筆家・三城俊一/生活・文化編集部)