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雑音を洗いながす。
船の汽笛が朝を知らせる。
ここは、坂が多い住宅街にあるマンション。
ベランダからは太陽の光に照らされた市街地や大阪湾を一望できる。
北には山、南には海。
そんな家だからこそ坂に沿って風が、音を連れてくるのだろう。
私はこの音が好きだ。
起きぬけの汽笛が、日常の雑音で疲弊した耳を揉みほぐしてくれるから。
無限に生まれ、消費されては、飽きられていく音楽。
止むことのない誹謗の声。
全てをリセットする白い絵の具の様な存在である。
一日のうち、たった一度だけ触れ合えるこの音は何物にも代え難い。
続いて、教会やお寺からの鐘の音が近くで響き渡る。
汽笛の余韻に絡まり、音が濃厚になっていく。
世界で一番贅沢な瞬間だ。
こんな贅沢な音たちは私に朝という素晴らしさを教えてくれたのであった。