まとめ)AFTER DIGITAL CAMP 続アフターデジタルVol.3
今回はマーケティングイベントでお会いした大石さんにオススメして頂きました”アフターデジタル”の著者である藤井 保文さんが月に1回程度で開催している”AFTER DIGITAL CAMP”についてのまとめです。
既に本を読まれた方も多いかもしれませんが、この本は今年読んだ本の中でも上位に入る衝撃を受けた1冊でした。
まだ、読まれていない方にはすごくおすすめな本なので是非読んでみてください。
まずは今回のイベントの主催のビービットさんと主著者の藤井さんの紹介です。
※当日の資料からいくつか引用させて頂いています。
本日のスピーカーの藤井 保文さん
普段は上海に住んでおりますが、こうしてイベントなどで頻繁に日本に帰ってこられているとのことでした!
今回のイベントの主旨
ビービットさんではOMO(Online Merges with Offline)という言葉をなんとなく理解し、社内展開されていることが増えているな、という課題感を感じられているそうです。
そういった課題感を今回のイベントを通じてOMOの背景や概念を再定義し、社内で同じ絵を見ることや、自身に役立たせたいということでこのイベントを開催されているそうです。
補足
※イベント資料にもありましたが、藤井さんが中国に在住しており中国の事例研究を行なっているということもあるので、中国事例から見える話を中心にされています。
※中国ではなく、世界全体の事例を希望する場合は、共著者である尾原 和啓さんのオンラインサロンをおすすめされていました。
今回のアジェンダ
1. アフターデジタルおさらい
2. OMO概念が発生した背景と理由
3. 2つの傾向
4.「OMOを大事にする」ことの意味
5. OMOだけでは語り切れないUX企画方法論
1. アフターデジタルおさらい
本を読まれていない方はそもそも「アフターデジタル」とはなんだ?と思われるのではないでしょうか?
アフターデジタルついて、資料でわかりやすく説明されていたので抜粋させて頂きました。
本にも書かれていますが、リアル(オフライン)とデジタル(オンライン)を切り分け、リアルを軸にデジタルを活用していくことが日本企業ではまだまだ多いようです。
しかし、この「アフターデジタル」の世界では、「デジタルが起点(軸)」であり、リアル接点(オフライン)をどうやって活用するかが鍵となります。
「リアルな接点というレアで貴重な場」と書いてあるあたりも、「デジタル起点」というのがよくわかります。
この「デジタル起点」が浸透すると、中国のように”オフラインのない世界”になっていきます。
このオフラインのない世界では日用品の買い物やタクシー移動などオフライン行動だった生活全てがデジタルデータとして”個人”にひも付き、あらゆる”行動データ”が利用可能となるので、企業競争の焦点が「製品」から「体験」へ変化します。
どういうことかというと、これまでは「顧客属性」しか取得できなかったので、販売の際には ”製品単体” で勝負するしかありませんでした。
しかし、「顧客」データだけでなく、「行動データ」も取得・活用することができれば、ターゲティングのみでのアプローチではなく、「最適なタイミング」×「コンテンツ」×「コミュニケーション」の提供が可能となるので、「体験全体」での価値提供が可能となります。
こういった世界を実現する為、とにかく「データ取得が鍵!」
と、なりがちですが「体験」志向であるからこそデータが集められているということを意識する必要があります。
※アフターデジタル社会での成功企業が共通で持っている思考法がOMO(Online Merges with Offline)ということになります。
2. OMO概念が発生した背景と理由
OMOは「目的」ではなく、提供価値を高めるための「手段」である。ということを理解することが大切です。
※OMOの大切な概念は「顧客視点に寄り添う」こと。
顧客との接点をどう構築し、つなぎ合わせ、全体の体験価値(提供できる価値)を向上させられるかを考えることが大切で、それを実現させる手段の一つがOMOなのです。
では、なぜこのOMOの概念が発生していったのかということで元Google China CEOの李開複の4つのOMO発生条件が紹介されていました。
1. スマートフォンの普及・安価化 →いつでもデータ取得可能
2. モバイルペイメントの普及 →少額な決済でも利用可
3. センサーの安価化 →リアルな行動データの取得可能
4. AIの発達→ 様々な分野での自動化が進み、スピード感が高まる
これらの条件がきっかけとなりOMOが普及したことは間違いないですが、中国では「環境からやむを得ず」発生したということもお話されていました。
具体的には、アフターデジタルの社会環境において、14億人の人口を抱えている環境だからこその状況に対応するべくOMOが普及したと言われているそうです。
①EC化率20%の壁への対応
簡単に言うとEC化率が国内20%で頭打ちとなったので、グローバル展開を推進! となりがちですが、グローバル展開ではなく、残りの80%(国内)をアリババは取りに行く戦略を取ったということです。
とはいえ、14億人の80%の市場なので、まだ11億人の市場です。。。
中国だからこそですが、とんでもない規模の市場ですね。
②オンラインのCPAよりオフラインの方が安くなった
ネットユーザーが8億人という中国市場なので、どの企業もネット市場を狙ってくるので自然とレッドオーシャンになっていきます。
そして、この膨大な市場にリーチさせようとすると自然と膨大なお金がかかってきます。
こうした状況だと、CPA(Cost per Acquisition)が ”オフライン” よりも ”オンライン” の方が高くなるということが起こり、結果として ”オフライン” で顧客と接点を取ることがマーケティング上の当たり前の打ち手になるということが起こるそうです。
こういった市場の中国では、アリババやテンセントといったビックプレイヤーにとって ”デリバリー”(リアルの生活でとても便利なサービス) を活用したネットユーザーの獲得はとても有効な手段の一つになっているそうです。
また、化粧品や飲食などは試供品を ”自販機” で展開するといったリアルの生活を活用したキャンペーンなども次々と登場しているそうです。
※オフラインを通じた訴求は ”たくさんあるものの中の一つ” となってしまい、埋もれてしまうことが多い為、リアルの生活を活用したキャンペーンが次々と登場しているそうです。
3. 2つの傾向
藤井さんはOMOの事例には大きく2種類あると考えられているそうです。
1. 流通革命(ニューリテールと呼ばれる小売系OMO)
2. 接点革命(顧客理解をエンハンスする付加価値的OMO)
1. 流通革命について
ここは是非、本を読んで細かい部分を確認して頂きたいですが、「発想の転換」と「技術革新」が起こったことによって、顧客が ”いつでも、どこでも、どんな選び方も出来る”ということを実現したものが流通革命です。
※藤井さんによると、この「流通革命」は ”アセット”を持っていないと始めるのがすごく難しいとのこと。
ビービットさんも「流通革命」系のコンサルティングをする際に、その企業が ”アセット”を持っていないとそもそもコンサルティングのしようがないということをお話しされていました。
2. 接点革命について
接点革命が起こることによって、顧客の状態が可視化され、いつでも最適なタイミングで接点を持てることが大きく変わった部分と言えます。
アプリ上での行動をチェックし、仮説を立て最適なタイミングでコンタクトをすることが出来るので、「営業効率」が圧倒的に良くなることが見込まれているそうです。
整理すると上記の資料にも書かれていますが、従来型の「リアル接点を軸に、デジタルをツール的に扱う」から「デジタル接点を軸に、顧客の状況を捉え、リアル接点をツール的に扱う」という考え方に転換していると言えます。
顧客データを見る際に、ファネル型のデータではなく、シーケンスデータで見るということが書かれていますが、「デジタル接点を軸に、顧客の状況を捉え、リアル接点をツール的に扱う」ことができれば、シーケンスデータでデータを見れる様になります。
シーケンスデータが取得出来るようになれば、マーケティング手法も大きく変わり、選択肢もかなり広がりそうだなとこの話しを聞いて感じました。
接点革命の事例
ここでは、デジタルとリアルの接点を双方活用したシナジーとして、2つの会社の事例が紹介されていました。
1. 次世代EVカーメーカー NIO
「NIO」のサービスは「購入後」の部分にフォーカスされていたので、自身の業界にも置き換えできそうだったのですごく印象に残りました。
上記の資料に記載されている4つのサービスは大きく2つに分けることができると藤井さんから説明がありました。
◼️NIO House / NIO App・・・意味レイヤー(ライフスタイルや世界観を提供)
→NIOユーザー向けにイベントなどを毎日のように開催している。 NIOユーザー同士での交流やNIOを使っている方の「NIOを使った生活」が紹介されていたりする。
◼️NIO Power / NIO Service・・・便利レイヤー(役にたつもの)
→サブスクモデルの様な形で、メンテナンスや保険がついたり、バッテリー交換をデリバリーしてもらえたりと、さらに便利に使っていただける様になる。
※上記サービスは一例ですが、「購入後の満足度が高い」ということが特徴だそうです。
※NIOのユーザーでない方もアプリをインストールしているそうで、サービスを受けられる特典もあるそうです!→アプリ内の行動によっては、NIOから試乗の案内なども届くそうです。
「車」という商材の場合、「購入後の接点」がなかなか取れないので、アプリなどを通じて「購入後の接点」を積極的に持ち続けられるようにNIOではしているとのことでした。
顧客の「行動データ」を取得し続ける仕組みをアプリなどを通じて設計していくことが、「購入後の満足度」を高める秘訣なのではないかと思いました。
2. 不動産賃貸 ズールー
こちらのズールもNIOと同様に、賃貸契約終了後もサービスやコミュニティなどを通じて接点を取り続けている企業です。
一例として賃料に8%のサービス料を上乗せすることで清掃サービスや修理などを受けられる特典などがあるそうです。
また、ズールの面白い仕組みで「スコアリング」というものがあり、スコアが高い方は様々な特典を受けられる仕組みになっています。
この仕組みを利用してズールが提供する賃貸は住居環境を高い水準を維持できているので、人気のとなっているようです。
※共同生活でのルール違反やマナーが悪いなどといった、他者に迷惑をかける行為をするとスコアが下がってしまう様に設定されている。
NIOのサービスもですが、「製品(サービス)提供後」の部分にかなり注力しており、「接点」を取り続け、顧客に満足体験を提供し続けていけるかが、事業拡大の鍵になると2つの事例から学ぶことが出来ました。
4. OMOとUX -OMO注力の本質的な意味合い-
こちらではなぜOMOに注力するのか、OMOとはなんなのか?ということを改めて説明されていました。
簡単にまとめると ”O2Oは企業目線” であることに対し、”OMOは体験提供型、顧客視点に置き換える” ということです。
なぜ ”OMOに注力する必要があるのか” を再度確認するかというと、「アフターデジタル」の時代においては、「顧客」にサービス / 製品の選択権と選択肢が持たされているからです。
これまで以上に「顧客提供価値」での勝負となるため、企業側はOMOを通じて、その価値を最大化することが求められます。
繰り返しになりますが、 ”データ取得” や ”OMOを始める”ということではなく、「顧客提供価値」を高める為に、データを取得し、OMOを通じて「顧客体験価値」を高めていくということを意識しなくてはならないということになります。
OMOでは ”チャネルを区別しないということが大切” と便宜的には言われていますが、それぞれのチャネルの強みをうまく生かしていく必要があると藤井さんからお話がありました。
顧客提供価値の最大化をするために各チャネル毎の強みを考え、それぞれの強み(得られるもの)を生かしてOMOを実現していくということが大切だということです。
今回のまとめ
まとめに書かれている通りですが、OMOとはなんなのかということを改めて理解し、「ビジネスの目的を達成させる」ための手段がOMOだということを理解することが大切です。
よくあることですが「手段」が「目的化」してしまわない為に、組織全体が一丸となって「体験型提供価値」の意識を揃えていく必要があるということです。
企業全体の意識を揃える為には、体系的に学ぶだけでなく今回紹介されていた企業や事例を学ぶことが大切なのではないかと思います。
今後もアフターデジタルの世界の事例が続々と出てくると思いますので、アンテナを張ってチェックしていけたらと考えています。
もし、アフターデジタルの世界に興味がある方は、本もそうですが、定期的に開催されているこのCAMPにも参加するのが良いのではないかと思いました。
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