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11月「チャノキ(茶の木)に寄せて」

チャノキの花は、白く小ぶりで、葉の影に俯くようにして咲く。
そんな花姿からか、花言葉は「追憶、純愛、謙虚、思いを辿る」などがある。

チャノキはいわゆる「茶」だが、その花をみる機会は意外と少ない。
広大な茶畑が、白い花畑になることはない。
葉に栄養を行き渡らせるため、蕾のうちに刈り取ってしまうらしい。

また、チャノキは栽培が広まった結果、山間に自生しているものも多い。
人里離れた場所でチャノキが自生していたら、
そこはかつて集落があった後かもしれない。

暮らしの中だけではない。
茶ということばを使ったことわざはとても多い。
また「茶の湯」にみるように、人の精神(こころ)の深くに入り込んでいる。
人とチャノキの間には、様々な物語があって、一言で語れない関わりあいがあるようだ。
そういえば、「強い結びつき」という花言葉もあった。

喜びの日も、悲しみの日も、一杯の茶があった。
それは中国最古の薬物書『神農本草経』に最古のお茶が登場した頃ー紀元前2700年頃といわれる―から
遣唐使時代に留学僧が日本に持ち帰り、薬用として貴族たちが、
喫茶としては、鎌倉時代には武士が、室町時代以降は庶民にまで広まり…。
チャノキは多くの人々を見てきたことと思う。

歴史の中で、たとえ困難に出会っても時代を切り開いていく人々を見ては
そのすべてを懐かしむように、人知れず白い花をひっそりと咲かせてきたのかもしれない。
「困難との出会いさえ、いつか追憶の中で白い花が咲くように願いを込めて」と。

大きな困難を前に心折れそうな時、もう頑張れないと思った時、
そんな時を懐かしく思い出せる未来がきっとくる…!
誰もがそう信じられることを願って。

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