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浅葱色の覚書「愛ゆえの無関心だってあるし。」 / It's Lonely At The Centre Of The Earth
はじめ
さほどメインストリームに取り沙汰されない作品ばかりピックアップする系noterのasagiiroちゃん。(『西の魔女が死んだ』はメインストリームか。)普段触れているメディアがそんなんばかりなのだから致し方ないじゃない。いいんだあ、あたしゃスミッコで、否、ドマンナカでアングラかまし続けるわよ。
ほいで今回扱う作品も、どちらかといえばアングラ。しかも洋書。訳書も出てない。なんかゴメン。でも非常に読みやすいし、かわいいし、カッコイイし、そして何より面白い。だから此処に綴りにきたのである。Love from Japanである。
なか1
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主人公(=このコミックの著者)Zoe Thorogoodは、ヒット作品を持つイギリスの売れっ子マンガ家。ダイナーやカフェにいるとファンから話しかけられるほど。それでもZoeは孤独を感じる。この星の中心で独りぼっち。そんな彼女の「絶望の6ヶ月」を、マンガというフォーマットを、常識をぶっ壊しながら回想していく自伝的絵巻物。憂鬱回想の果に、彼女が出した結論とは如何に。
Zoeは本当に優しいひとなのだと思う。そして、究極的に優しいひとは、自ずと「独りぼっち」にならざるを得ない。
本作品、というかZoe本人に纏わりつくのは「自己非難」("self-depreciation")の念である。彼女は自分の事が本当に好きになれず、「苦しんで当然」("deserve my suffering now")とさえ言う。でも、「過去の自分には罪はない」とも。彼女が責めているのは、飽くまで「今現在の自分」で、基本的にそれ以外の人を責めたり、傷つけたりしたくはないのだ。(冷たい態度をとったときも、結局罪悪感が自分に返ってくる。)
2023年公開の邦画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」では、コミュニケーションで他人を傷つけてしまうことを避けるために、ぬいぐるみに悩みごとを相談する人々が登場する。究極的に優しいひとは、他人との接触をも避けてしまうのだと思う。
Zoeは自分の心の中に、そしてマンガの中に自己非難の苦痛、憂鬱、葛藤を連れ込むことで、極力他人を傷つけないように、関わらないように生きてきた。(そんな中でも仲良くしていたIzzyは、やはり選ばれしソウルメイトなのだろう。)
しかし、それだけではよろしくないという事に彼女は気づいた。独りぼっちの現在地から、抜け出す決心をしたのだ。多かれ少なかれ、善くも悪くも、人々は影響し合って生きている。そうやって誰かが存在することで、確かに生じた幸福もあるのだ。「天使」が車道にいてくれたおかげで、Zoeは自殺を止められたわけだし。Zoeがいたから、Izzyやネコのおじさんの人生が少なからず彩られたことだろう。
自分自身を変えることはできないが、そんな自分の「世界との関わり方」は変えられる。
「人と関わらない優しさ」と「人と関わる優しさ」。其れらの鬩ぎ合いの狭間で、私たちは生き続けるのだ。
なか2
いやしかし、兎に角reliableである。共感の嵐である。作中、Zoeが自分の作品に対して「わかる〜!」と共感するファンたちに眉を顰める描写があるが、正直「わかる〜!」である。「『わかる〜!』という共感に『むぅ…。』となること」さえも「わかる〜!」なのである。すまんね、Zoe。でも、わかるんだもん。
小さなコマではあるが、本当に「わかる〜!」となったのは次のセリフ。
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学生時代、正しくそういった朝があった。段々と目が覚めてきたなら、そこからは決まって下り坂("usually downhill")なのだ。わかる〜。
おわり
Zoe曰く、「自殺を試みようとするのは、『別の場所に行きたい』というサイン。」「違う時間の流れる、違う感性を持つ場所へ行きたがっているのだ。」とのこと。
正しく「西の魔女が死んだ」じゃあないか。
「西の魔女~」感想回でも述べたが、「死ぬくらいならば、逃げておくれ」とわたしも思う。出版されずとも、あなたの人生は貴いひとつの物語なのだ!と結ぼうと思ったが、なんだか止めた。そうだとは確かに思うのだが、なんか偉そうに言えなかった。
まぁ兎に角、愛ある無関心を。愛ある関心を。
ついしん: わたしは、こういった「作者の脳内ぶちまけ系作品」が大好きである。ひとの話や考えを見たり、聴いたりするのって本当に面白い。