ジョン・ガリアーノ「High&Low」世界一愚かな天才デザイナー
「どうだった?」と聞かれたら、観て良かった。
私は、ファッションとは関係が無い仕事をしているが、
母がファッション関係の人だったので、家にはファッション関連の本が並び、母が作った服を着ていた。
「母が作った服」は、その年のトレンドを意識したもので、例えば、中学高校の頃は、ギャルソンのようなモノトーンだった。
『ヴォーグ』『エル』を毎月購入するのが楽しみで、特に、スーパーモデルが着る、ジョンガリアーノ、アレキサンダー・マックイーン、シャネルは特に好きだった。
そして、今年の秋、ジョン・ガリアーノのドキュメンタリー映画が公開されると知った時、ある時代の華やかな思い出が蘇ってきた。
ガリアーノはカメラに向かい「洗いざらい話す」と語るが
「反ユダヤ主義的暴言とアジア人差別発言」
ヘイト発言の理由は、最後に彼自身の口から明かされるのだろうか?
はっきり言うと
「ガリアーノは洗いざらい話しているつもりでも、理由や正解は明確にはなっていない」
ガリアーノ自身のHigh&Lowの人生を見せられ、解釈を委ねられている気がした。
期待外れという訳ではないが、本人の記憶が曖昧で、特に主義主張も無く、空気が読めない人で、差別発言でマウントをとり、影響を考えず、つい無意識で言ってしまったように見える。
しかしながら、アルコールの影響、仕事のプレッシャー、近しい人の死が理由とは言え、滞在意識の中では差別意識があったのだと思う。
ファッション界の革命児を救う人達
そのたぐいまれな才能とスター性。商業的に成功せず、経営難に陥るが、MHLVベルナール・アルノーとの契約、スターデザイナーとして天国と地獄の道を歩んでいく。
映画のポスターには救う人の姿が。
コレクションの発表を助ける、若かりし頃のガリアーノとアナウィンター。
自身の結婚式のドレスをガリアーノにオーダーしたケイトモス。
ガリアーノの偉大さを語るナオミ・キャンベル。
彼のまわりには、いつも「救う人、去る人」の存在がある。
永遠に去る人。壊れていくガリアーノ 光と影
2007年ガリアーノの右腕、クリスチャン ディオールとガリアーノのスタジオのスティーブン ロビンソンが38歳で亡くなった。
これきっかけで、ガリアーノのアルコールや抗うつ剤への依存が更に増していく。
(スティーブン ロビンソンの死因は4年後、コカインの過剰摂取であったことが明らかにされた)
2010年アレキサンダー・マックイーンが死去。そして、疎遠だった父親の死去。
山のような仕事、アルコールと薬により彼の体の内側は確実に蝕まれていく。その反面、弱さを隠すように筋トレで得た筋肉の鎧とコスプレか?と思うほどに煌びやかなコスチュームを身に付け、コレクションのラストに登場。このガリアーノ劇場は徐々にエスカレートし、失笑されるほど。
誰もが、ガリアーノ危うさを感じ、そして、あの「反ユダヤ主義的暴言とアジア人差別発言」により、クリスチャン・ディオールと自身のブランドを解雇される。
あの衝撃的な事件から約3年後。3年は長かったのか?短かったのか?
その答えは、インタビューの中にあった。
「ファッション界は忘れやすい。彼は白人だから」
ヘイトは発言により、傷つけられた人はトラウマを抱えて生きている。
フランスの田舎町にパートナーと静かに暮らす
現在、彼はフランスの田舎町でパートナーと共に、アルコールとは無縁。
地味だが健康的な生活を送っている。
折しも、ケイトモスが一時、干された原因となった、ピートドハディーも今は、フランスの田舎に住み、不健康で痩せていた体が思い出せないほど、恰幅が良いおじさんになっている。
メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)深紅のドレス
映画のポスター。
メゾン マルタン マルジェラのクリエイティブディレクターに就任したガリアーノの復活の象徴とも呼べる、2015年春夏オートクチュール・コレクションの深紅のドレスだ。
マルジェラなのか?ガリアーノなのか?当時、物議を醸しだしたのを覚えている。
メゾン マルジェラ2024年春夏オートクチュールは、ガリアーノ節が炸裂した、メゾン マルジェラ最高の作品と評され。ガリアーノはディレクターの契約更新はしないことが確定した。
マルジェラの次は何処へ。
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