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頭の中で考えてることを綴りたい4 ~忘却~
好きな本がある。ふと思い出したように読み返す。一読、二読しただけでは、どうしてその本が好きなのか、府に落ちる「言葉」が思い付かない。でも、なぜかまた読み返す。
読み返すまでに、半年から一年ほど時間が経過していることも多い。内容は当然知っている。知っているはずなのに、目に留まる情報も、文脈の解釈も、微妙に違ってくる。それがまた面白い。だからまた時間をあけて、読もうとなる。
外山滋比古先生の「思考の整理学」。本書も何度も読み返した。
一読目は、自分が無知ゆえに、見慣れない単語(セレンディピティ等)ばかりに目をとられ、なんとなく知識が増えた程度で読み終えた。
「思考を整理する実践的な方法を教えてくれる本」だという漠然とした印象が、どうやら根付いていたらしい。時間が経過してから再読すると、忘却の有用性に魅了された。
三読、四読、五読…と、時間が経っては、ふとした瞬間に読み返す。その都度、忘却が「自分の頭で物事を考える」ために重要であることが、理解から体感へと変化していく。
生活をしていると、もっと記憶力が良ければと、悔やむ機会に面することがしょっちゅうある。どうやら、私だけの感覚ではなく、世間一般においても、「記憶力の良さ」に対する価値が高いようである。
一方で「忘れること」はどうか。覚えていることと比較すると、悪い印象が根強い。本書に出会うまでは、私も一方的に「忘れること」を悪者扱いしてきた。
「「忙」の字は、心を亡くしていると書く。忙しいと頭が働かなくなってしまう。頭を忙しくしてはいけない。がらくたいっぱいの倉庫は困る。」
本書の中で、忘却について語られている部分の、ほんの一部分のフレーズだが、とても好きだ。忘れること=悪い という思考停止に陥らないように、忘れることは脳の自浄作用であることを、認識させてくれる。
忘れるからこそ、読んだことがある本にもう一度触れることで、また新しい発見ができる。忘れるからこそ、感覚的に好きだと思えることに、何度も触れてみようと行動できる。覚えていることと同じくらい、忘れることもいいやつだと、丸く考えられるようになってきた。
こんな考えを呟いたことを、きっといつか忘れてしまう自分の脳を誇りに思いながら、引き続き考えることを楽しんでいこうと思う。
思考の整理学https://www.chikumashobo.co.jp/special/shikounoseirigaku/