小学校の先生からアイドルになった私
私は大学を卒業して、小学校の先生をしていた。
授業はやりがいがあって楽しいし、子どもたちの成長はこの上なく嬉しい。
大きな行事があれば、子どもたちと一緒になって全力で取り組む。
忙しかったけど、教師である日々は毎日が充実していた。
だけど。
私には人には言えない夢があった。
アイドルになりたい。
昔からアイドルが大好き。
歌やダンスは得意ではないけど、それでもステージに立ってみたい。
そんなことは叶わない。
だって私は教師をしている。
年齢も24歳。
普段から先生をしながらもやっぱり頭の片隅にはアイドルになりたかったなぁなんて思いがあった。
テレビで見る、輝いているアイドルに憧れた。
憧れは憧れのままだと思っていた。
5月に運動会があった。
その年はダンスを任された。
ダンスはもちろん、音楽や構成など全て1人で考えた。
子どもたちに教えながら、毎日一緒に踊った。
忙しかったけど、楽しかった。
楽しすぎた。
踊っている時に、あぁやっぱり私これがしたい。
アイドルになりたいという夢がより大きくなった。
今のままでいいのか?
今のままでもいいかもしれない。
だけど、もっといい未来、もっと自分が後悔しない道に行ける可能性もあるかもしれない。
運動会が終わってから、何ヶ月も考えた。
11月。
私は人事異動希望調査票の「退職」に丸をつけた。
教師を続ける選択肢。
教師を辞める選択肢。
どっちを選んでも後悔はするかもしれない。
でもやらない後悔よりやって後悔する方がいい。
一度きりの人生なんだから。
周りの先生には残念だと言われた。
友達には驚かれた。
本当は教師を辞めるのは怖かったけれど。
私は私の未来を信じることにした。
翌年の4月から私はアイドルになった。
ダンスも歌も未経験な私を拾ってくださる事務所が見つかった。
猛練習を重ねた。
初めてステージに立ったことは今でも忘れられない。
緊張で足が震えた。
声も出なかった。
それでもいい。
なんとも言えない幸福感が私を包んでいた。
毎週末は遊ぶ暇もなくステージに立ち続けた。
東京や名古屋に遠征に行った。
私の地元でもライブをした。
毎日必死に練習をしてきた。
一回りも年下のメンバーたちと頑張ってきた。
かけがえのない時間だった。
ある日、SNSに投稿したことが大バズりして拡散された。
「小学校の先生あるある」を載せた。
たくさんいいねもコメントもきて嬉しかった。
しかしその中で引っかかるコメントもあった。
「先生辞めるなんてもったいない」
「アイドルより教師の方が絶対いいのに」
そんなことをはっきり言われたのは初めてで、その夜は眠れなかった。
先生を辞めてアイドルになったことは「もったいない」ことだったんだろうか。
先生の方がアイドルより偉いのか?すごいのか?
何日も、何ヶ月も考えた。
けど答えは出なかった。
そんなモヤモヤを抱えて誰かと話したくて、たまたま見つけた占い屋さんに立ち寄った。
「すごいと言われようが、なんと言われようが、あなたの価値は1ミリも変わらないから大丈夫。」
占い師にそう言われた。
なるほど、他人になんと言われようと私の価値は変わらないんだ。
そして私の価値は私が決めていいんだ。
そう思えてスッキリした。
それからどんなコメントが来ても何を言われても「大丈夫」と思えるようになった。
アイドルであった時間はかけがえのない時間。
だけど辛いこともいっぱいあった。
あの子は可愛くていいな、
あの子は歌がうまくていいな、
あの子はファンがいっぱいいていいな。
周りを見れば全然ダメな自分と比べてしまって落ち込むことなんて日常茶飯事だった。
周りからも理不尽なことを言われることもあった。
誹謗中傷されることもいっぱいあった。
もしかしたら教師の時より辛いことは多かったかもしれない。
その度に、
「自分の価値は自分で決める。」
そう呟いて、乗り越えてきた。
アイドルを卒業した今でも、あの時踏み出したことで揺るぎない自信がついた。
遅すぎることなんてない、
なろうと思えば私は何にでもなれると気付いた。
今。
私は30代になり2人の子どもを育てながら主婦をしている。
毎日悩みながらそれなりに幸せな日々を送っている。
そして子どもたちを育てる中で密かな夢ができた。
昔から書くことが大好きな私。
発信を通して書くことを仕事にしたい。
今までの自分の体験、経験を文章にしたい。
それを読んだ誰かの背中を押せたら。
そんなふうに思う。
人生踏み出すのに遅すぎることなんてない。
そして他人になんと言われようが私の価値は変わらない。
これは過去の私から学んだこと。
このヒントをもとに、これからもやりたいこと、叶えたい夢は全部挑戦して未来をつかみとっていきたい。