わたしたちのbefore/after ― ディカプリオ様の定めと供に
今から思うに、たしかに女子たちが騒いだわけでした。ディカプリオ様、それはそれは美しかった。
なぜ年を取るとその美が消えてしまうんでしょう?どこ行った??
みんな、年だからと当たり前に思ってることについて書きたいです。
1.衝撃の映像を見て
晩年の写真と20代の頃の写真比較です。
いろんな有名人がめくられてゆきます。どれもこれも驚愕、愕然、びっくりします。
https://twitter.com/i/status/1663240788766257152
あなたも10代、20代は外見に悩んだことと思います。
でも、良いパーツをもらったはずの女優も男優も、どれもこれも似たり寄ったりのafterになっていました。
あれほど悩んだ”顔”なんだけど・・・。
人類が繰り返す常習詐欺でしょう。
お年頃になると、美のミューズが空から降りて来る。いい香りもする。そよ風も吹く。。
若い頃美しいのは、それは”良き伴侶”をゲットするため。(品なく言うと相手を”ひっかける”ため)
そう思うでしょ?
いやいや、わたしたちは、結果を見てそう解釈しがちですが、ぜんぜん違うのです。
2.他人事のように見ていたのだけれど
映像を見ているうちに、あって思った。
わたしはじぶんの目の前のかのじょに対してさえ、その過去をすっかり忘れていました。(35年以上お付き合いが続いています)
関西に引っ越してきて3か月になります。
この街を海辺から六甲山に向かって、阪神が通り、JRが通り、阪急が通るという地形なんだということをようやく、からだが納得したところ。(なぜこんなに線路が無駄に多い?)
で、来る前、神奈川で断捨離してた時、やっぱり、わたしたちの過去がぞろぞろ出てきました。
新婚旅行に行ってそこで写真を撮ったのですが、よせばいいのにその写真を陶器のプレートにしてもらってた。やめておけばよかった。。
関西に持って行っても、こっぱずかしくてとてもじゃないけど飾れません。
そもそも写っているふたりは誰?と思われてしまう。
収納空間が少ないマンションだから箱詰めにしてお蔵入りということも難しい。
でも、勝手には無かったことにはできない。
わたしはかのじょに確認した後、プレートをえいゃぁって破断し、こなごなにし、無かったことにしました。バイバイ、わたしたちの過去。。。
でも、ほんとは壊したくはなかったのです。
35年前のかのじょの美と躍動感がこんなにすごかったなんて、たしかに、それはわたしの”宝物”なのです。
でも、あの時のあなたは、もうここには居ない。。。時間のギャップにおどろき胸がうずく。
怒りいらいら当たり散らしてきたわたしが、あなたを枯らしてしまったんだね?
beforeを記憶から消してたじぶんが、、申し訳ない。。 (ほんとに)
3.ジャガーノート
「ジャガーノート」の語源は、ヒンドゥー教のヴィシュヌ神の化身であるクリシュナの異名、ジャガンナートとなります。
イギリスの植民地時代のインドのことでした。
ラト・ヤートラー祭り(「山車の行進」)のとき、狂信的なヒンドゥー教徒が救済を求めてジャガンナート像を載せた山車の車輪の下に身を投げた、とキリスト教宣教師が本国に伝えました。
以来、イギリス語圏でこの「ジャガーノート」は、”止めることのできない巨大な力”、”圧倒的破壊力”を意味することとなりました。
無情な時の神が、巨大な車輪で容赦なく男も女もひき潰して行きます。
この世の人たちは、何故かその車輪の下に飛び込んでゆく。
顔なんかグチャグチャになる。
氷の海で沈みながら微笑んだディカプリオ様も、着地に向かって崩壊し行く。。。
それはまったく別人であり、美男美女だったがゆえにいっそう悲惨です。
こんなにもにんげんのbefore/afterが違うんだということをあなたはクリアに知ってる?
もちろん、あなたも気付いてる。
自分のじいちゃん、ばあちゃんが昔から、シワシワ梅干し、やってたはずがないんだから。
なお、みんなは老いる時、救済を求めはしますが、車輪の下に喜んで身を投げはしません。
4.言い換える
ジャガーノートを現代物理学で言い換えると、「エントロピー増大則」となるでしょう。
ただし、なぜ崩壊が定めなのかは依然として分かりませんが。(誰一人、例外出さないようにとマメに管理する神がいるんでしょう)
二十歳の頃、クラスで統計熱力学というのを教えられました。
エントロピーという概念がわたしにはしっくり来なかった。
これは、「不可逆性」や「乱雑さ」を表す物理量でした。
無秩序なほど高い値、秩序が保たれているほど低い値をとる。
有名な性質として、「エントロピー増大則」というのがあって、常にエントロピーは増大したがる。
そして、宇宙はこれに逆らえない。
物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻ることはないというのです。
ということで、この自然の法則に逆らって秩序を保つには、そこに余分にエネルギー突っ込まないとなりません。
維持するためのエネルギー補充がいる。
放置すれば、凛々しい体系はバラバラになって行く。シワが寄り、口元は歪む、からだはぶくぶくと膨らむ。やがて、土に・・。
5.ライザップは役に立たないか
青年の美とはいったい何なんでしょうか?
あなたが女子なら、おいくつになってもやっぱり若い男子に依然として興味があると思います。
ギリシャ彫刻のようなほっそりとした体、シャープな顔の輪郭とアゴと優美な口元、はっきりした輝く瞳。
均整の取れた組み合わせなんですね。それをわたしたちは「美しい」と思う。
でも、その形態を維持するためには、多くエネルギーが彼に投入されなくてはならないのです。
崩れようとするエントロピー増大則に逆らって均整を維持するには、それ相応のエネルギーを突っ込んでやらないといけない。
豊富なエネルギーが均整維持のために注がれているのが、”青年”です。
ということで、人はいっぱい食べていっぱい動いて、美を維持しないとなりません。
そんな活動量は、とうぜん、10代、20代でしかやれない。その時代は、”生殖の季節”でした。
いや、あなたが60歳でもライザップに行けばいい。
行って、食事と運動をがんばればスマートな美は再生されます。(CMでやってるとおりのafterになれます)
でも、並行して生命力は確実に衰え続けてゆく。この時代は、骨折、大病・・そういうのが目白押しの”病の季節”です。
ある日、ちょっとした病気やケガになったことがきっかけになって、あなたは行くのを中断してしまうでしょう。
そしたら、あっという間に元の木阿弥に。
ライザップに永遠に通い続けることはできないのです。
もうライザップにも行けないわたしは、このまま老醜の沼に沈むでしょう。
もちろん、ディカプリオ様と言えども、この世のすべての物が従うエントロピー増大則には逆らえない。
だから、老いると美男美女が一律、同じような「どれもこれもみんな似たようなモノ」に着地するのは、
それはエネルギー投入が細ってしまい、維持できずにバラバラに”ほどけた姿”だからです。
ほら、最終形態の”骨”にまでほどければ、A男もB男も区別がつきませんもの。
あなたはafterの老化を”当たり前だ”と言うでしょうが、
もしエントロピー増大則が貫徹しなかったなら、そんなに当然なことでもないのです。
まぁ、いずれにしろ、わたしたちは納得できません。
いや、車輪を憎む。そんなのに救済は求めないっ。
6.これから先、今が一番若いの意味
老醜が染みて来たわたしは、これから先はもっと崩れます。
だから、たしかにこれから先、今が一番若い。今がもっともバランスが取れている。
と、言えなくもないのですが、何をどう言おうが、外見はやっぱり惨めが加速する。
このフレーズは単なる慰め?
かのじょが話しかけてきました。
外見はお察しの通りですが、じつは中身はまったく変わっていません。
というか、よりお茶目になってます。
ちょっと引っかかったこと、不思議だなぁ~と思うこと、可笑しいなってこと、微笑ましいなぁってこと。
そういうことをわたしに投げかけてくる。
むしろ、怒りがトーンダウンしてきた季節にいるわたしに対して、余分に「ふしぎがり」さんが問い掛けて来る。
わたしは、それがつまらないこともあるし、ほほぉ・・・って思うこともあります。
不思議がっては、いろいろ考えてるひとです。
それは変わっていません。
初めて会った時のような驚きと柔軟性と熟慮というセットを維持していると思います。
たしかにこれから先、今が一番若い精神をかのじょは持っているでしょう。(褒めすぎか)
「これから先、今が一番若い」の意味は、精神の成熟ということかと思います。
比較や評価、虚勢を落とすことが、成熟とともに出来るようになります。
それは、からだの老醜を味わった後に本格化します。
エントロピー増大則の車輪に惨めに踏みつぶされ、生の惨めさを思い知ったから、別な道をとようやくひとは探し始めるでしょう。
自然の掟、神の掟。。
いろいろ噂は聞くのですが、ジャガーノートに怯えてはいけないとわたしは思うのです。
P.S.
残念ながら、冒頭の映像のようには人のこころのbefore-afterを見ることは出来ません。
もし、見たなら、きっとわたしもあなたも、驚愕、愕然、びっくりするでしょう。
それは人によってあまりにafterが違うからです。
いえ、劣化したマインドのことではありません。
あなたは、星の王子様をそこに見るかもしれません。
いいえ、見えなくとも、確かにafterの方がすごい人っていますもの。