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アサの朝 (ch5) - 時差

 天気が悪いせいか目を開けると身体が思い。あんだけ熱く語った牛乳も切れていて、コーヒー牛乳も抹茶ラテも作れない。そうだ、ベルギーで買ってきた紅茶がまだ少し残っていたはずだ。
 
 私は会社員だが2021年に現在の会社に転職してからはずっと、在宅勤務だ。二、三度会社のイベントでオフィスに行ったことはあるものの、それっきりだ。それゆえに、昨年末に東海岸側に引っ越してきた後も特に問題なくそのまま在宅勤務を続けている。

 だが一つだけ大きく違うことがある。アメリカは広大だ。広大ゆえになんと六つもの時間帯があるのだ。それまで住んでいた西海岸側はパシフィックタイム、こちら東海岸側のイースタンタイムとは三時間の時差がある。つまり私が、さあ仕事でもするかとパソコンにログインする頃は多くの同僚がまだ夢の中、かもしれない。

 専門職だし役職があるわけではないので、会議も多くて一日に三つほどだ。引っ越してきた当初は同僚に合わせて11時半くらいから19時半まで仕事をしていたのだが、なんたって生活リズムがおかしくなる。だって今までは8時から16時くらいの就業時間だったのだから。早い時は7時くらいから始めていた。でもこちらの時間の16時はあちらの13時だ。ログアウトするには早すぎて少し気が引ける。

 多分私が夜型なら問題なかった。私は朝方です、と胸を張っては言えないが、朝の方が集中できるのは確かだ。お昼ご飯を食べた後はもう、集中力は二割くらいしか残っていない。そんなわけで就業時間を試行錯誤、また昼食の時間の試行錯誤。なんとなく自分に合った時間を見つけることができた。

 そして今日のような朝だ。身体中だるくて頭も痛い。痛み止めを飲んで横になる。そうだ、ちょっとだけ自分の決めた就業時間に遅れたって別に構わないではないか。その甘えを少し恐怖に感じながらも、今日だけ今日だけ、と心に誓い、もう一度目を閉じた。目を開けてベルギーの紅茶を飲むと気分も頭も少しスッキリして、少しだけ罪悪感を感じる朝がやってきた。

*写真はベルギーの街角

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