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春の日。10年目に寄せて。


私は宮城県に住んでいます。

あの日から10年を迎えます。

3月。春なのに雪が舞っていて寒かったのを思い出します。

経験したことの無い立っていられないほどの揺れ。
停電。断水。

スマホとラジオからしか情報が得られない中で、
津波の報道を見た時の記憶。
SNSに溢れる情報の波。
本当か嘘か何も分からずに、
それらを見ては泣くことしか出来なかった記憶。

何もかもが映画のワンシーンのように切り取られて
心の深い所の引き出しにそっとしまわれています。


봄날 Spring Day

「春の日」と名付けられたこの曲は
ジンくんがたくさんのインタビューですきな曲として答えてくれる、大切な曲です。
離れ離れになってしまった人を想う、切なくて優しい春の歌。

またどれくらい夜が明けたら
君に会うことができるだろうか
また春の日が来るまで
花が咲くまで
そこにもう少しいてほしい
留まっていてほしい

愛しい友人に会いたい、冬が終わって春が来るみたいです、すぐ迎えに行くから、もう少しそこで待っていてほしい。
と歌うこの曲は、
ある悲しい事故で失われた、いくつもの若い命へ宛てたものです。
彼らはJUNGKOOKと同年代の高校生でした。

ジンくんはこの曲を
僕たちを代表する曲ですと言い、
これは願いの曲でもありますと。


この事故と震災は同じに並べられるものでは無いかもしれません。
それでも、私の中でこの曲は10年前のあの日を振り返る時の想いとよく似ています。

この曲をパフォーマンスする時彼らは
背中同士で何度もすれ違う。
会いたいのに近くにいるのにとても遠い。
一瞬触れたのに、振り向いてくれる時には自分からまた走り出してしまう。
何度も繰り返してやっと出逢う。
手を取って抱き合うことが出来る。
そんな風に歌ってくれます。

そんな気持ちで10年を迎える。
みんなそうだと思います。

この世に残された人が立って、前を向いて、歩き出すのには
記憶をそっとしまっておくことが必要です。
“忘れる”という事でしか進めない人もいます。

それでも分かって欲しいのは、「忘れる事」と「思い出さない事」は違うということです。
前に進むために一瞬忘れても、ずっと思い出さない訳では無いからです。


1年に1度。あの日と同じ、あの時間に。
そっと引き出しを開けて
あの時のワンシーンを思い出す。
あの人の懐かしい笑顔を思い出す。
一生歳を取らない愛する人を思い出す。


今はまだ誰かとの思い出と呼ぶのは難しいかもしれない。
どこにぶつけたらいいか分からない感情でいっぱいだと思います。
けれど、愛する人を想う、その時間がどうか、
この曲の様に愛しいものでありますように。


これを読んでくれる
何百キロも離れた場所に住む見知らぬ貴方も。

1分だけ目を閉じて、祈りを捧げて欲しいと思います。

あたたかい春がくるようにと。


追記
2024年3月11日になりました。
この文章を書いてから3年の月日が流れて自分自身にもたくさんの事がありました。
そんな流れるように過ぎてく普通の毎日が
3月11日のこの日だけは時間が止まっているような
景色があの日と同じに見えるような
そんな不思議な感覚になります。

2024年、元日にまた大変な地震災害がありました。
能登の古き良き貴重な建物がたくさん被害にあって
3ヶ月以上経った今も避難所でたくさんの方が避難生活を送られています。
心と身体を大切に少しでも早い復旧復興を祈っています。

3月になっても雪が舞う13年前と同じような気候。
はやくあたたかい春がきますように。



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