ミン・ヒジンという人
私が最初にミン・ヒジンという名前を知ったのはいつだったか。記憶は定かではないが、とにかく最初のイメージはf(x)である。
f(x)の2ndアルバム『Pink Tape』こそミン・ヒジンの代表作だと思う。そのアートフィルムでは彼女の感性がいかんなく発揮されている。
ミン・ヒジンはソウル女子大学校を出てSMに新卒で就職し、たった15年で平社員から役員まで昇り詰めた凄腕キャリアウーマン、アートディレクターである。
少女時代の最大ヒット作品『Gee』のカラー・ジーンズコンセプトを考案したのもミン・ヒジン、SHINee、EXOの「あの雰囲気」を作ったのもミン・ヒジンというから、SMの芸術性の中核にいた存在がミン・ヒジンであったことは間違いない。
SMにはユ・ヨンジンという凄腕の作曲家がいて、その愛弟子KENZIEも含めてこの二人が音楽性を支えていた。
SMはイ・スマンという人材発掘に長けたプロデューサーを頂点に、音楽面を支えるユ・ヨンジン&KENZIE、芸術面を支えるミン・ヒジンという両輪がいてこそK-POP界を牽引する存在だったと思う。(今はもうユ・ヨンジンも、ミン・ヒジンも、そしてイ・スマンもSMにはいないけど)
当時のミン・ヒジンのイメージは、「おとなしくて芯の強そうな孤独な芸術家」であった。
まさか数年後に会見で大暴れして世界を驚かせることになるなんて夢にも思わなかった。
当時からミン・ヒジンのことを悪く言う人はいた。
「他人の手柄を横取りする」とか。
真実はさだかではないが、社内で上からも下からも横からも皆に愛されるみたいなタイプではなかったと思う。
それはなんとなくイメージ通り。
当時から、芸術と仕事にしか興味がなさそうなイメージだ。仕事仲間と仲良くする感じではない。
ミン・ヒジンがSMを退社し、さらにHYBEに入社したときは世間に衝撃を与え、「裏切り」と怒る人もいた。
とくにSMファンにとってはミン・ヒジンの行動は許しがたい部分もあったと思う。
まあしかし私のイメージでは、ミン・ヒジンはお金目当てで転職したわけではないと思うし、SMへの恩とか義理を人並み以上に大切にするタイプでもないと思う。
自分の才能が活かされる環境でなくなったと思ったら、サッサと見切りをつけてより良い環境に移住するタイプ。
ただその辺の「良い環境」の見極めみたいなものは下手だと思う。
彼女は芸術家肌で、生き馬の目を抜くようなサバイバルは得意ではなさそうだ。今はまさにそういうサバイバルに否応なしに参加させられているわけだが…(素直に可哀想と思う)
ミン・ヒジンはSMで一緒に仕事をしたf(x)のソルリやSHINeeのジョンヒョンが自ら命を絶って亡くなってしまったので、それでK-POP界がいやになったと推測する人もいるようだが、私はなんとなく、あの事件はそこまで彼女の人生に影響を与えていないんじゃないかという気がする。
もちろん悲しかったとは思うが。
ミン・ヒジンの最大の関心事は自分の感性の具現化であり、会社の商業的利益や、アイドルの個人的な幸せ、ファンの幸せなどは二の次ではないだろうか。(どうでもいい、というわけではない)
ミン・ヒジンはK-POP界の非人道的なスケジューリングが嫌なのではなく、過剰な商業主義や「誰が1位」といった競争を気にする文化が嫌いなのだと思う。
なんとなく私は自分がミン・ヒジンに似ている気がして気持ちが手に取るようにわかる。
特に人情深いタイプではなく、かといって悪いことを企むタイプでもなく、彼女が自分で言った通り「他人に関心がない」のだ。
ただNewJeansのメンバーのことは我が子のように大切にしているようなので、それを考えると、やはりf(x)やSHINeeのメンバーを守りきれなかった無念はあるのかもしれない。
ミンヒジンは44歳。私とは20歳近くも離れているので、その内面には想像できない部分もある。
ミン・ヒジンは自分の考え方についてたびたびインタビューなどで語っている。(外向的ではないのに、自分のことになると意外とよく喋るタイプ。これも私にそっくり)
これらのインタビューでの発言は、ほぼ彼女の本心といって間違いないと思う。
なぜならSM時代からインタビュー記事、動画、あらゆる媒体で語っていることが全て一貫している。
「芸術性>商業的利益」
「流行りに乗るのではなくて流行りを作る」
「自分が一番良いと思うものを作る。大衆は後からついてくる」
クリエイターとして何かしたことがある人なら、誰もが共感する部分があると思う。
ミン・ヒジンは人前に出る時にいつも帽子をかぶっているので視線恐怖症という噂もあったが、例の会見でも帽子🧢をかぶっていた。
過去に本人がインタビュー記事で話していたところによれば、あまりメイクをしないので外出するときは帽子をかぶってごまかすらしい。
ミン・ヒジンはいわゆる美人ではあるが、しっかりメイクをするタイプではない。
こんなところにも男社会の中で頑張ってきた彼女の苦労が見えるような気もする。
ミン・ヒジンが4月にあの会見をしたとき、私はリアルタイムで全て視聴したが、話を聴きながら、
「ああー、ああー……」とずっと呟いていた。
おそらくミン・ヒジンが言ったことは全て本当のこと(客観的にではなく、ミン・ヒジンにとって)だと思う。嘘を準備する時間もなかったし。
だからこそ立ち回りが上手いとは思えなくて。
じゃあどうすればよかったのか?と聞かれると、もっと良い方法が浮かぶわけでもないから、とりあえずああする(会見を開いて全てを話す)しかなかったんだろうとは思うが。
あの会見が誰かの利益になったのか?
ADORという会社、NewJeans、HYBE、名前を出されたグループ、K-POP界全体ーー。
そしてやはりミン・ヒジン本人にとってどうだったのか、というのが私にとっては一番大切だ。
私にとってミン・ヒジンはHYBEのアイドルたちよりもずっと前から知っている存在だから。
だからこそあの会見での立ち振る舞いがミン・ヒジンの立場を良くしたとも思えなくて。
でもそういう計算ができないところも理解できるので、「ああ〜」と言うしかなかった。
追い詰められたミン・ヒジンは自分やADOR、NewJeansの将来を冷静に考える余裕もなく、ただ「全てを言うしかない」と思ったのだろう。
損得を考えるなら弁護士に話をさせるとか、方法はほかにもあったのに。
会見でミン・ヒジンは弁護士に「黙れ。私が話す」と言うくらいだった…
会社や組織の中である程度責任を背負って仕事をしている人たちには理解できないと思うけど、ミン・ヒジンは究極的に自分(の才能)が一番大切で、会社やアイドルたちのことはそれを実現する手段としか思っていない、
それの何が悪い?
だって才能があるんだもの、私には。
そういうタイプである、多分。
しかしそれくらいでないと芸術家ってのは搾取されて終わってしまう。
SM時代に言われていた「手柄を横取り」という悪口もそうだと思う。
他人に横取りと思われるくらいに自己主張していかないと、自分の手柄なんてなかったことにされてしまう。
そういう世界で生き残ってきたミン・ヒジンが今こういう状況になって、私は毎日けっこうつらい。
世の中にはアイドルへの暴言はいけないがミン・ヒジンに対してなら何を言ってもいいと思っている人が本当に多いようで。
もうミン・ヒジンはADORの代表ではなく、一人の社会人であって権力者ではない。
あまりひどいことは言わないでほしい…ミンヒジンの目には入らなくても、私が傷つくので(笑)