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【映画】「ドリーム・シナリオ」理不尽にネットミーム化したニコケイが悲惨すぎる
ニコラス・ケイジ主演の「ドリーム・シナリオ」を観てきたので感想などを綴ります。
映画について(ネタバレなし)
ごく普通の暮らしをしている大学教授のポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。
ある日、何百万という人々の夢の中に一斉にポールが現れ、一躍有名人に。人々にもてはやされ、メディアの注目を集め、
夢だった本の出版まで持ちかけられ、ポールは天にも昇る気持ちだった。
しかし、そんな夢のような日々は突然終わりを告げる。
夢の中のポールが様々な悪事を働くようになり、現実世界で大炎上。
その人気は一転、ポールは一気に嫌われ者になり、悪夢のような日常が始まる。
何もしていないのに人気絶頂を迎え、何もしていないのに大炎上したポールの運命はー!?
大好きなプロダクションA24の作品で制作はアリ・アスター、監督はノルウェー出身で今回が長編3作目という新進気鋭のクリストファー・ボルグリ。
不穏な空気感が”らしい”作品で、更にニコケイ(ニコラス・ケイジ)の存在感がものすごくてこの映画の「夢のミーム現象」に一番ふさわしい俳優なのではと思いました。実際本人もネットでミーム化していじられまくってたときもありましたよね。そういう体験もしているニコケイなので風刺が効いた本作が自分にはぴったりだと思ったのか、脚本をすごく気に入ったそうで演技が素晴らしかった!
ニコケイといえば90年代を代表するハリウッドスターにも関わらず浪費家で有名で抱えた借金返済のためにB級映画に出まくりました。本当に笑っちゃうぐらいいろんな映画に出てた!最近だと「マッシブ・タレント」とか自虐的なのがなんとも面白かったです。
予告編を見てもわかる通り、平凡な大学の先生がある日から突然何百人という人の夢の中に出てくるようになり、それからその先生が夢の中で暴走し始めるんです。(ニコケイなら私の夢にも出てきて欲しいけど。)
これ、設定から絶対面白いはずですよ。こんなお話聞いたことないもん。
暴走して本物の殺人鬼として登場ならフレディ(エルム街の悪夢)になってしまうけれども、そんなホラー映画ではないんです。
夢で暴走した先生はリアルでどうなっちゃうの?
ここからは次の「あらすじと感想(ネタバレあり)」でお話します。
あらすじと感想(ネタバレあり)
大学の先生ポールは何故突然人々の夢に出てくるようになったのか。
最初は自分の娘、または偶然ポールの事を知っている数名がたまたま夢に現れたポールについてSNSにポストしたことが原因なのか「そういえば私の夢にも出てきたわ!」という人が出てきます。
これ、実は元ネタがあるそうなんです。
イタリアの方が立ち上げたサイトで「この男を夢で見たことがありますか?」と写真付きで問うたところ「そういえばみたことあるわ!」という人が続々現れたそう。夢というのはもともと曖昧なもの。本当は見たかどうか不確かさもあるでしょうが顔写真を観ることによって無意識に刷り込まれたのでしょうか、私が見たのはこの人だって。
これは社会実験として行っていたそうですがネットミーム現象になったそうです。
さて、沢山の人の夢に出てきたポール。
夢の中でポールは、夢を見ている本人のそばを素通りするまたはじっと立っているだけで何もしません。でも夢にポールが現れるという事がミーム現象になって、それまで閑散としていたポールの講義は生徒で満員、雑誌やテレビに取り上げられたりポールは一躍有名人になってしまいます。
リアルなポールはなんにもしていないのに!!
ポール自身は、平凡な生活をしており普段は他人にすごく気を使うとても穏やかな印象のある人物ですが、本当は自身の専門分野で論文を書いて本を出版したいという野望を持っています。そう思っているだけでアクションは一切起こしていません。でも有名人になったことで本の出版ができるかもと欲が出てきます。
しかしある時、同僚が自分と同じ研究分野で成功したのを見て「自分が考えていたことを横取りされた」と怒りをあらわにします。その様子を見た娘が、その日から夢に出てきた父親がすごい形相で自分を追いかけてくる悪夢を見てしまいます。
まるで伝播するように、他の人の夢の中でポールは悪事を働くようになってしまいます。
人気者だったポールは悪人になってしまい、街では避けられたりにらみつけられたり、はたまた生徒からのクレームで教鞭に立つことも出来なくなってしまいます。
リアルなポールはなんにもしていないのに!!
これって現代の社会風刺?
ネットではいいことも悪いこともバズるとあっという間に話題になりますが、悪いことの方が伝播しやすいのは人間の心理なんでしょうか。
テレビやネットでのイメージが独り歩きして、本当のその人となりを見ることなく伝聞した印象だけで良い時は褒めたたえ悪い時は手のひらを返したように大勢が誹謗中傷する現象は記憶にも新しいですよね。
ポールは動画で「私はなにもしていない!」と必死に弁明するんですが、伝え方が悪く返ってまた印象が悪くなってしまい、妻にも飽きられてしまうのです。
こうなっては本人はどうすることも出来ません。
そして・・・・・
しばらくしてポールは人々の夢に出てこなくなります。ネットのバズりのように嵐のごとくあっという間に人々に忘れさられることになります。
しかしポールが失ったものはあまりにも大きすぎました。
リアルなポールはなんにもしていないのに!!
それからしばらくして、ポールの出来事からインスピレーションを受けてとあるデバイスが開発されます。
手首にはめるバングルのようなもので、それをはめると他人の夢に自分を出現させることができるそう。それは企業広告に使われて他人の夢でスポンサーの商品を宣伝することが出来るわけです。人の深層心理の中でCMを打って商品を購入させるんですね。
なんだかサブリミナル効果みたい。
こんなデバイスがあったら怖いけれど、他人の夢に入れるというのが魅力になるんでしょうか。今や家を追い出され一人ぼっちになってしまったポールは、妻の夢に入りたくてそのデバイスを付けて眠ります。
夢の中では妻が理想としていた自分の姿で二人が仲良くしている様子が出てきます。
でもこれは、ポールの妻の夢ではなくてポールが見たい夢を見たのではないかな。私はポールの元通りに奥さんと仲良くしたいという願望がそうさせたような気がしました。
なんとも終わりが切ない。。。
何度もいうけど、リアルなポールはなんにもしていないんだよ!!
この映画、あまりに理不尽すぎて恐ろしかったです。
誰しも名声を得たいという気持ちはあるとは思いますが、ポールのように何も行動を起せないでいる人って多いですよね。それなのに偶然自分がミーム現象になったら自分の知らない所でイメージが勝手に独り歩きしてしまい自分では手に負えなくなってしまいます。
現代のSNSではいつそういうターゲットになるかわからないんですから怖いです。
そしてあのデバイス。
「ブラック・ミラー」の話に出てきそうな感じです。
SNSでも何気なく見ている広告ってやっぱり効果あるんでしょうねぇ。私も時折どんな商品なのかなってクリックすることもありますし。
とにかく目に触れなければ商品を知ってもらうことが出来ない訳ですから、企業も広告費にはお金をかけるしマーケティング開発もあの手この手で売り上げを伸ばすための施策を錬っているわけです。だからあんなデバイスあったら飛びつきますよね。
でも・・・
ブラック・ミラー的に考えれば、そのうち夢の中で沢山のスポンサー商品が出てきたら眠ることがストレスになり、安眠するためのドリンクやサプリメントが夢で宣伝されることになるかもしれません。
「ドリーム・シナリオ」、かなり好きなタイプの映画でした。
そしてニコケイの映画の中で3番目に好きかも。(1番は「リービング・ラスベガス」2番は「キック・アス」)
現在アメリカでは夏公開のホラー映画「Longlegs」でニコケイがシリアルキラーに扮しその怪演ぶりが話題になっているそうです。アメリカの予告編見ましたが「ドリーム・シナリオ」の禿げ頭のニコケイとは全く違って、狂ったシリアルキラーがすごかった!
早く日本で観られるといいな。
「ドリーム・シナリオ」私的にこの映画の評価は★★★★☆でした!