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【映画】「アンデッド/愛しき者の不在」北欧の鬼才による詩的映像が印象的

北欧メランコリック・ホラー「アンデッド/愛しき者の不在」を観てきたので感想を綴ります。



映画について(ネタバレなし)

現代のオスロ。息子を亡くしたばかりのアナとその父マーラーは悲しみに暮れていた。墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰る。一方、別の場所でも不思議な現象が起きていた。交通事故に遭った女性が奇跡的に蘇生したり、教会で葬儀を終えたはずの死者が家に戻ってきたり…。
愛する人の生還に喜ぶ家族だが、彼らは明らかに生前とは違っていた。

公式サイトSTORYより

独立系映画スタジオで最近注目のNEONがアメリカとイギリスの配給をしている作品で、原作は映画「ぼくのエリ 200歳の少女」「ボーダー 二つの世界」ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストさん。今回も共同執筆で脚本を担当されています。
リンドクヴィストさんの作品って、どれも静かに流れる時間の中でキャラクターの心情をじわりと沁みこませるように表現するのが特徴で「北欧的」といえばそれまでなのかもしれないですが、映像も詩的で物語の深さを感じます。
「ぼくのエリ 200歳の少女」はハリウッドでもリメイクされましたが圧倒的に北欧版の方が好き。「ボーダー 二つの世界」も独特の世界観が癖になります。
ジャンルはどれもやっぱりホラーになるのかな。
今回の「アンデッド/愛しき者の不在」もホラーだけれどラストは恐怖よりも悲しみの感情の方が強かったです。
ひとつ注意をしておくと、大切な人をなくされてまだ辛い思いをしている方にはあまりお勧めできないかもしれないです。

リンドクヴィストさんの作品2つが映画化されてますし、今回も様々な映画祭でのノミネートや受賞がありかなり期待の大きかった作品だと思います。

さて、次はネタバレありで感想を綴ります。


感想(ネタバレあり)

この映画、長回しの場面が多くまたセリフも少なめです。
そのため登場人物達の悲哀がすごく伝わりました。私がノルウェー語が理解できたらもっと良かったかもしれないなあ。

最初のおじいさんが娘のアパートへ徒歩で移動する場面なんて、いきなりビルの屋上まで引きの映像が来てさらにそこからまたおじいさんの経路をたどるように娘のアパートまでターンするところ、あれは観客目線なんだろうけど最初からめっちゃ引き込まれました。

物語は3つの家族のお話になっています。
アナは息子(マーラーにとっては孫)を亡くした悲しみからまだ立ち直っていません。息子は墓地の中です。
トーラは失ったパートナーの葬儀を済ませたばかり。
ダヴィッドは交通事故にあった妻を病院で看取ったばかり。
大切な人を亡くした時期は違うけれど、どの家族もまだその悲しみを受け止めることが出来ていません。
ある夜に大停電が起こり(電磁波?)そこから死者が蘇るようになってしまいます。ところが蘇った者はまるで廃人のようで表情はなく会話もできません。
それでも3つの家族は愛する者の蘇りを喜びます。

社会では蘇った死者を捜索しはじめます。二度と息子を失いたくないアナはマーラーとともに離島?の孤立した小屋へ隠れて暮らすことにしました。
トーラは自宅へ帰って来たパートナーを迎え入れ以前と同じように一緒に食事をしたりベッドに入り眠ります。
ダヴィッドは母親不在の中子供たちをケアしています。そして病院で精密検査を受ける妻の元へようやく子供たちと見舞いに行けるようになります。
しかしその後、この3つの家族に悲劇が起こりました。

蘇った愛する者は生きている人間を食べ始めたのです。

え?!

お話的にこのまま廃人のようになった者たちがどんどん朽ちていくのを家族はいったいどうするのか、等の問題が出てくるのかなとか思っていたのですが・・・
ゾンビファンとしては頭の片隅に期待していた通りになって嬉しい驚きでした。

いやー、これ終盤の残り20分過ぎ(だと思う)の展開ですよ?!いきなりラストで「ぞぞぞっ」と恐怖が増しました。
結局あの3つの家族がそれぞれ異なるエンディングを迎えることになったんですが、私としてはそこからのストーリーが見たい!と思いました。
オスロの街はゾンビさん達をどうしたのさ。
でもそこは描かれない。描いてゾンビ退治したらハリウッド映画になっちゃうのですよ。
はい、完全に納得です。だから嫌いじゃないですこのエンディング。

トーラがパートナーに襲われてしまうところや、ダヴィッドの妻が病院でどう処置をされたのかは描かれていませんが想像できますね。
そしてアナの息子の2回目の最期だけが描かれることになります。ボートから息子を自分の手で海に放すことによってアナは本当のお別れが出来たのかもしれません。
それにしてもおじいさんが可哀そうすぎる(泣)
それからアナが抱っこした時に首をすこしだけかじられ「痛っ」ってなるところがよかったですw

愛する者がそばにいてくれるなら廃人でもいいと思うのは当然の気持ち。廃人状態からもしかしたら生還するかもしれないという望みが捨てきれないですよね。
でもそれは本当に自分の為そしてその相手の為になるのでしょうか。

今回の映画のようにいっそゾンビになったら思いを断ち切れるのかもしれない。
なんとも切ないストーリーでした。

「アンデッド/愛しき者の不在」私的にこの映画の評価は★★★☆☆でした!


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