或る苦悩 【ショートストーリー】
「…こ、怖すぎて、か、書けない…っ。」
その日、ミステリーホラー小説の名案が浮かんだのである。
しかし、それはあまりに核心的で革新的と確信するあまりに、私は恐ろしくなってしまった。
そういうことはないだろうか…。
ああ、残念ながら、私には書けそうもない…。
腑抜けた小説家だ、私は…。
せっかくの名案を無駄にするのか…。
しかし書けないものは書けない。
こ、怖すぎるもの。
こ、こんな矛盾があるなんて…。
小説家なんてやめよう…。
というかまだひとつも書いていなかった…。
はぁー…、こ、怖いっ!