まもなく2歳の子供にごめんねと言わせてしまった話
うちの子供は朝なかなか起きられない。
抱き起こそうとしても抵抗して布団に突っ伏してしまう。それはこの日も同じだった。
僕自身も朝は苦手で、風邪で具合が悪かったこともあり、だんだんといらだつ気持ちを「子供なんだから仕方ないよなぁ」となだめた。
待っていては登園時間に間に合わないので、体をよじって抵抗する子供をどうにか抱いて1階に降りる。
眠りたい気持ちを無視されたからか、ついには泣き始めてしまい、リビングについてからも泣きながら自分の足で2階に上がろうとする。
その様子に、僕はもーーーっ!と苛立ちを声に出してしまった。
僕の声に何か反応があったわけではなかった。
見かねてか、妻が子供を抱っこしてなだめてくれる。
子供は妻にあっち、あっちと2階へ行くよう示し、妻がそれに従う。
僕が後からついていくと、行先は寝室ではなくサンルームだった。
サンルームからは道路が見える。トラックを見つけては、たぁっく、おった。と指さしていて、もう泣いていなかった。
気持ちを落ち着かせるため、しばらく一緒に外を眺めてからリビングに戻ったものの、まだ十分ではなかったらしく、テレビの前に寝転がってご飯を食べようとしてくれない。
このときには僕もすこし冷静になり、自分の食事をしながら子どもを眺めていた。
すると、子供が寝返りを打って振り返り、明るいとも暗いとも言えない表情で、とうたん、と呼びかけてきた。
はあい。と答えて近づくと、子供は膨れたような、笑いをこらえるような表情になり、
起き上がって、ごめんね。といった。
その言葉を聞いた瞬間、自分の行動がとても幼稚だったと反省した。
今になって考えてみれば、ごめんねという言葉が感情によるものなのか反射的に発せられた言葉なのかは分からない。
でも、僕の行動がごめんねという言葉を引き出したことに変わりはない。
子供の振る舞いは、大人から見たら幼稚だったり、短絡的に見えてしまうことがある。
だけど、子供は子供の感性で泣いたり笑ったりする。そしてその気持ちをうまく表現する方法が分からないなりに、それでも伝えようとしてくれている。
それがどんなにありがたいことか、忘れかけていた。
どうして笑っているのか、なんで泣いているのか、なにに興味をひかれているのか。毎日の心の機微をなるべく見落とさないようにしたいと思った。それから、子供からのメッセージを僕なりにどう受け取ったか、ちゃんと伝えようと思った。
こちらの言葉が子供にどれくらいの伝わっているのかはよく分からない。それでも、根拠はうまく説明できないけど、丁寧に伝え続けることが大切なんだという気がした。