ロイヤリティ〜「世界で勝たなければ意味がない」読書日記〜
本投稿のGOAL:「ロイヤリティ」を理解し、自分が属する組織に置き換え、考えられる。
アルカスユース熊谷、ヘッドコーチの菅原です。
昨日、本日と、とうとう私の故郷、山陰は鳥取、島根両県でも、それぞれ初となる新型コロナウィルス感染症患者が出たとのニュースが。
この時点で、感染未確認は、岩手県のみとなりました。
物凄い感染力です。
元気な日本に戻った時に、いきなりトップスピード、いや、これまで以上のスピードで走り出せるよう、その準備に勤しみます。
本日は読書日記です。
読了したのはこちら。
「世界で勝たなければ意味がない 日本ラグビー再燃のシナリオ」(岩渕健輔著、NHK出版発行)
1、 著者紹介
新書で、あらすじをまとめられませんので、著者紹介から入ります。
現在、日本ラグビーフットボール協会専務理事、男女7人制ラグビー日本代表総監督、男子7人制ラグビー日本代表ヘッドコーチを兼務する岩渕氏。
幼い時に父親に連れて行ってもらった「香港セブンズ」を観戦したことをきっかけに、岩渕少年は海外を志すようになります。
ちなみに「香港セブンズ」とは、毎年開催される、セブンズ(7人制ラグビー)ワールドシリーズの香港大会のことで、同大会は世界各国を転戦するのですが、その中でも香港セブンズは一大イベントとして有名です。
先日ご紹介したセブンズフィジー代表も、この香港セブンズを「特別な場所」と捉えていました。
当時の想いそのままに、青山学院大学を卒業後、イギリスの名門、ケンブリッジ大学に入学。それと双璧をなすこちらも名門、オックスフォード大学との定期戦「バーシティマッチ」にも出場。
ケンブリッジ大学卒業後は、イングランドのプロラグビーリーグ・プレミアシップのスター集団「サラセンズ」、フランスのプロラグビークラブ「コロミエ」を渡り歩き、日本に帰国しました。
大学2年生時から日本代表にも選出され、スタンドオフとして20キャップを獲得しています。
2、2019年ラグビーワールドカップ日本大会ベスト8への計画
本書が出版されたのは2012年。かの有名なラグビー日本代表前ヘッドコーチ(HC)、エディー・ジョーンズ氏が就任して間もない時です。岩渕氏も、同時期にラグビー日本代表のゼネラルマネージャー(GM)に就任しました。
2012年ですので、2019年ラグビーワールドカップ日本大会、その前に2015年ラグビーワールドカップイングランド大会、2016年リオデジャネイロオリンピックを控えている時期です。
2009年には、ラグビーワールドカップが日本で開催されることが既に正式決定しています。
そこで岩渕氏、日本ラグビー協会は「ラグビーワールドカップ日本大会で、ベスト8に進出する」という明確なゴールを設定しました。
ただ、2012年当時、ラグビー日本代表は低迷期にありました。世界ランキングは15、16位あたり。そこでエディー・ジョーンズHCは就任直後、「まずは世界トップ10入りを目指す」と公言します。
エディー・ジョーンズは日本代表HCに就任するまで、ラグビーワールドカップでは12戦中1戦しか敗れていない、世界に名が轟く名将です。ちなみにその1回も、オーストラリア代表「ワラビーズ」を率いた2003年オーストラリア大会、決勝戦での敗戦です。
「エディー・ジョーンズが来たのにトップ10!?」
などと当時テレビを見ながら思った私ですが、これは既に、2019年日本大会ベスト8へのシナリオの一部だったのです。
岩渕氏、日本協会は「ラグビーワールドカップ日本大会でベスト8」というゴールから逆算し、「2015年ラグビーワールドカップまでに世界トップ10入り」という中間目標を立てました。
現在は2020年です。昨年そのワールドカップ日本大会は終了しています。
結果は皆さんご存知の通り、我らが日本代表は見事ワールドカップベスト8というゴールに辿り着きます。
ただ前述の通り、2012年当時は日本代表低迷期の只中でしたので、そこから、当時だと到底考えられなかったワールドカップベスト8というゴールは、結果がわかって読んでいる私からも、果てしなく遠いものに感じました。
しかし、2015年ワールドカップでも、日本代表は南アフリカ代表「スプリングボクス」を撃破した「ブライトンの奇跡」を含む3勝を挙げました。
本書での何よりの驚きは、この時岩渕氏が記した強化計画通りの現実になっていることです。
今でこそ当たり前となっている、GPS(選手の背中に装着し、試合中の走行距離を計る小型機)の装着、ストレングス&コンディショニング(S &C)と呼ばれるフィジカル強化も、この頃から本格的にスタートしました。
明確なゴール設定、そこから一直線でつながる中間目標、そして「今」。
様々な意味で気の遠くなるような計画を綿密に立て、見事実行、成功させた岩渕氏はじめ日本代表スタッフの皆様の「凄み」を感じ、鳥肌が立ちました。
3、ロイヤリティ
本書で最も印象に残った言葉です。
「ロイヤリティ」とは、優先度の高さを意味する言葉で、この場合チームへの帰属意識を指します。
平たく言えば「選手が所属チームを最も愛しているのか」ということ。
若くしてヨーロッパのラグビーを経験した岩渕氏は、海外の選手たちが持つ、自チーム、自国代表チームへの「ロイヤリティ」に大きな感銘を受けます。
一方、これまでの日本代表はどうだったか。
ジャパンラグビートップリーグ(サッカーでいうJリーグ)は、今でこそプロ選手が多く在籍していますが、企業スポーツという背景が色濃く残っていたので、会社を休めないとの理由から、日本代表を辞退するケースもあったそうです。
海外では考えられないことでした。
日本代表が2019年のゴールに辿り着くために、岩渕氏はまず、選手の日本代表に対する「ロイヤリティ」を高めることから着手します。
これまで辞退者も出ていた日本代表を、選手たちにとって「何がなんでも入りたい場所」にするためには何をしなければならないのか。
2020年現在、今の日本代表を、会社の都合で辞退する選手はいないでしょう、おそらく。
「ロイヤリティ」。
私のチームにも、選手たちに「ロイヤリティ」を持ってもらうために、どんな準備が必要か。
この期間にしっかり考えます。
本日も拙文をお読みいただき、ありがとうございます。
ARUKAS YOUTH KUMAGAYA ヘッドコーチ 菅原悠佑
ありがとうございます。今後ともアルカスユース熊谷をよろしくお願いいましたす♪