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「異端の鳥」 これは人の怖さではない
第二次世界大戦下、異端とされてきたユダヤ人少年がナチスを、ソ連を、教会などを渡っていく物語
なかなかしんどい映画だと聞いて、積極的に見ようとは思わなかったものの
いざ見てみると、残酷さや悪辣さは見れる程度には抑えられていて3時間でもギリ耐えられるもので安心した。
でもって、この映画をして「人間の怖さ」と評されるのは少し有り体が過ぎるように感じられて
どちらかと言うと「宗教」や「思想」という個を結びつけるものと
それによって生まれる排外と
さらにはそのどれにも属さない「性」
全てから庇護と被害を一身に受けることによって、異端となってしまった少年が最後には家族と再会し
最初は幸せそうな父に強い反発を感じながら、父もまた異端として扱われていたのであろうことを知り、「異端」が一つの群れになり家路に変える。
つまりこれは人間って恐ろしいよね。ということではなく、何かに属することの恐ろしさや、属さず個でいれば変わらざるを得ない世界の非情さ。
そして最後には家族というものに属することの安堵
人間って怖いねということを主題に置いてしまうと、ただ「戦時下だもの」という実感のないものに落ち着かざるを得ない。
しかし、そういった「個と集団」の両面の恩恵と恐ろしさの物語であることを意識した方が、自分の中での存在感を増していく素晴らしい映画になるのではないでしょうか