50代・行政書士副業開業の記録(42)~あの派遣会社3 支店の日常~
さて現場の話である。緊張の朝である。派遣スタッフが7時半、8時半などの集合時間に集まっていないことがよくあるのだ。もちろん連絡せずに。電話が鳴り響き、「来られないなら、お前(支店長・スタッフ)が代わりに来い!」などの罵声は支店の朝の名物とさえいえるかもしれない。
支店そのものはとても小さい、物件スペースは多くが20坪程度。面接用の仕切りなど、いくつかの要素が満たされていれば比較的容易に営業の準備ができる。当時はスマホはまだなく、携帯電話でのやりとりが中心。「モ〇イト.com」などという若者向けのCMもあり、手軽に応募することを勧めていた。
支店で思ったのは、登録スタッフがとにかく受け身であること。私が昔の人間だからそう思うのか、バイトに応募の際は自分で調べて連絡(電話)し、不明な点は自分から質問したものだ。気に入らなければ無理にやる必要はない。直前に派遣場所をしらされ、仕事内容もよく分からないまま現場へ直行するのは働く側としてもなかなか怖いものであると思う。もちろん他に仕事・学業などがあり、空いている時間で有効に利用している人もいるのだが、大半はあまり何も考えず、言われるがままに動くという感じだ。もちろんこの派遣会社はデータ装備費、備品の購入など、いろいろなものを給料から引いていくのだが、まさに貧困ビジネスの一端を見たというところだ。
本当は社会に出る前に、税金、年金なども含め学校教育の中で知っておくべきことなんだろうけど、賢い経営者、為政者はそんなことはあえて知らせないんだろう。みんなが気づいて選挙に行ったり、暴動を起こしたりしたら自分の利益にならないから。「〇◯な大衆は適当にうまくおだてて、うまくコキ使おう」ぐらいに思っているのだろう。
すごいと感じたのが当時パソコンでつなげられていた登録システム。勤務状況を含む派遣スタッフの情報、顧客の情報を一元化したシステムだ。誰が開発したのか。全国1000近い支店、登録だけなら数百万人にのぼるスタッフをさばくシステムを考え出したことがすごい。10数年経った今はもっと進化しているのだろう。ちなみに私たち店舗開発グループが物件の承認を経営陣にもらうのもこのシステムからであった。当時は紙の稟議書にハンコをいくつももらう会社がまだ多かっただろうから、賃料だけで数千万円規模になることもある案件が、わずか数時間で複数人の経営陣の決済を得られるスピード感はたいしたものだと感じた。
ちなみに現場の支店長はしばしば「飛ぶ」。突然いなくなるのだ。顧客からの罵倒、社内の営業ノルマ、登録スタッフの粗相の後始末などで心身ともに疲弊し急に消えてしまう。入社すぐに大した研修もなくいきなり現場。同情する面も多い。急速すぎる店舗展開の当然すぎる悲劇。ここに「有給休暇・定時退社・ワークライフバランス」などという言葉は存在しない。現在はネット環境が身近になり、ブラック企業がいくらか目立ちやすくなり、以前より淘汰されやすくなっている。深刻な人手不足ともいえるが、それはトータルではよい流れである。